[D灰色男/クロス]
鬱蒼とした森の廃村に、響く絶叫。
「…さすがクロス。あれだけのAKUMAを瞬殺?」
「お前、年に一度のデートだってのにずいぶん無粋な奴らを連れてきてくれたな。」
「出かけに見つかっちゃってさ。」
「アホなヘマすんじゃねえよ。」
「ごめん。」
「ちゃんと生きていやがったか。」
「まぁね。クロスは相変わらず教団にはいないね。会えないからつまらないよ。」
「あんな堅苦しいところにいられるか。」
「ははは。こっちの動きもあるし、忙しいだろうねぇ」
「お前は暇そうだな。」
「そうでもないよ。」
「どの面下げてだ。七夕だけは通って来やがって。」
「いつも傍にいろよって?」
「自惚れ屋」
「ありがと」
「…おい」
「うん?」
「教会で良いな。」
「罰当たりじゃない?」
「神なんかいねぇよ。気にするな」
「…エクソシストさん?」
「クロス・マリアンだ。」
「あぁ、俺の最愛の人か。」
「…馬鹿。」
無神論者[BASARA/官兵衛]
穴倉にいる彼に、この星は見えないのだろうか。
「…お前さん、なんでこんなところに…」
「こんばんは、官兵衛。」
「刑部の差し金か!」
「ははは、大谷には黙って来たんだ。帰ったら殺されるかな。」
「………小生に何の用だ」
「本当に、星は見えないんだな。」
「星?…………あぁ、七夕…」
「穴熊さんは織姫な。」
「…小生なぞを織姫と言ったら怒られるぞ」
「誰に?」
「誰……お、織姫様に?」
「はははは、今頃彦星との逢瀬に夢中で聞こえちゃいないさ。」
「…お前さんは、またそういう…」
「案外純情な官兵衛には下世話な話だったか?」
「っ、喧しいわ!」
「すまんすまん、そう怒るなよ」
「小生はもう知らんっ!うおぁ?!」
「危ないな。だからいつも足元をちゃんと見て歩けと言うのに」
「こんな所に穴なんぞあったか?」
「無くとも穴をあけるのがお前なのだよ」
「………それは小生を馬鹿にしてるな。」
「そんなこと無いさ。ほら、引き上げるぞ」
「……世話をかける」
「なんのなんの。よっ、と。」
「相変わらず見た目に似合わん怪力だな。ま、何はともあれ助かった!すまんな。」
「気にするな。礼はちゃんと貰うから」
「れい?」
「そ。」
「な、んっっ…お、おいっ」
「穴熊を星空の元に引っ張り出してめちゃくちゃに愛してやろうと思ってな」
「愛し…!?ひっ、待て、な…を…」
「何をするかなんてわかってるくせになぁ。まぁ、可愛いから良いか。」
「ここは外だぞ!誰か来たら…!」
「大丈夫だ。気にするな。」
「気にする!せめて人目の付かないところへ…!」
「却下だ。あまりじらすな。手加減してやれなくなるぞ?」
「っ!!」
「イイ子、だな。」
「き、きちくっ…」
「その鬼畜に惚れたお前が悪い。さぁて、空の二人が恥ずかしくなるくらい、見せつけてやろうか。」
逢地河[最遊記/三蔵]
西へ向かう旅路の途中、深い森に紫眼の僧侶が1人。
「………おい、いい加減出てこい」
「あら、ばれてらぁ。」
「当たり前だ。」
「久しぶり、三蔵。」
「あぁ。…ったく、毎度のことながら分かりやすい結界張りやがって。」
「そうでもしないと二人きりになれないだろ。」
「……ふん。」
「鼻で笑うな。傷つく。」
「抱きつくな、暑苦しい。」
「久しぶりに会った恋人なのに冷たい。もうちょい優しく接することを要求する!」
「………だから抵抗してないだろうが。」
「…三蔵…!」
「んっ…噛むな馬鹿っ」
「かわいい。」
「はっ、目が腐ってるな。」
「腐っててもいいよ。三蔵が見えるなら、それで。」
「……阿呆」
「俺は三蔵がいればそれでいいんだ。……三蔵が俺のものになればいいのに。」
「俺は俺だけのものだ。」
「うん、知ってる。全部ひっくるめて三蔵を好きになったんだからな。」
「…今夜だけは、テメェのもんでいてやるよ。」
結界[魔法学校/学生スネイプ]
青白い空の下、天文台に見える小さな背。
「今夜は天文学無いよ。」
「…個人的に星を見に来ただけだ。君こそ、天文学は取ってないんだろう」
「奇遇。俺も星を見に来た。」
「っ、な、に…」
「同じ目的の2人が並んで座っても問題無いだろ?」
「…グリフィンドール生だろ。」
「スリザリン生の隣に座った覚えはないよ。セブルスの隣に座ったんだ。」
「…す、好きにしたまえ」
「そのしゃべり方似合わない。」
「うるさい」
「知ってるかい、東洋じゃ今夜は年に一度、離ればなれになった恋人たちが会える夜だそうだよ」
「あぁ、七夕だろ」
「ロマンチックだよねぁ」
「…………そうだな」
「…俺で残念だったろ。せっかく会えるならリリーが良かったと思った?」
「っ、そんな、ことっ」
「分かりやすいなぁ」
「………………き、君で…良かった…」
「無理しなくていいのに。」
「無理なんかしてない…!」
「セブルス……。ありがとう」
「…わ、わかればい」
「でもどうせなら『で』じゃなくて『が』がいいな。」
「?」
「俺『で』じゃなくて俺『が』良いって言って。」
「っっっっ!」
「………セブルス」
「…………………………っ」
「はは、ごめん、意地悪しすぎ」
「君が!っ、き、君に…来て、欲し…かった…」
「セブルス…!」
「なっ、なにっ」
「ごめん可愛すぎた!」
「い、意味が分からない!離せ!」
「うん無理。ごめん、もう少しこのままでいさせて。」
「っ………し、仕方ないな…」
「ありがとセブルス」
天文台[BASARA/大谷]
人気のない竹林に隠れる小さな庵に、普段は聞こえぬ人の声。
「お邪魔するよ。」
「ヒヒッ、徳川軍師が何用ぞ」
「意地が悪いな大谷は。織姫様に会いに来たんだ。」
「はて、ここに織姫なぞ居らぬが。」
「お前の事だと、分かっているくせに。」
「我に触れるな、木偶の坊。」
「ほんっとうに辛辣な奴だな。」
「離しやれ。」
「嫌だ。……また細くなったか?簡単に腕に収まったぞ。」
「主がでかくなったのであろ」
「馬鹿言うな。…心配だ。」
「…狂言もほどほどにしやれ。」
「狂言などではないさ。」
「……このような所、三成が見たら切り殺されるであろうな。」
「はは、俺だけ、確実にな。」
「………命が危険と」
「見つかれば殺されると分かっていても、大谷に会いたかったのさ。」
「…酔狂な男よ。」
「そう言うな。もう離れて随分になるだろう?」
「はて、そんなに経つか。」
「まったく。今日くらい許せ、七夕なんだ。」
「やはり主はとんだ阿呆であるなぁ…………………会いたいと思うのが主だけと思うでない。」
「大谷…」
「我も酔狂な者よ。」
「酔狂同士、ちょうどいいさ。」
「ヒヒッ、相違ない。」
類縁者[BASARA/信長]
彼の人が焼き消えた炭の寺社に、生者が独り。
「…何をしておる」
「星を肴に晩酌を」
「このような場所で可笑しな奴よ」
「炭の匂いが落ち着くのです。」
「ふん」
「信長様」
「何ぞ」
「…何故私を置いて行かれたのですか」
「………」
「私は誠心誠意貴方様にお仕え申し上げましたのに。貴方様以外に私の主はおらぬと何度も申しましたのに。」
「…是非もなし」
「光秀は連れて行かれたのでしょう?ずるいずるい、光秀ばかりずるい。何故私も殺して下さらなかったのですか」
「…貴様は殺すには惜しい男よ」
「殺す価値もないとおっしゃるか」
「……難儀な男め」
「私を連れて行ってくださいませ。貴方様のいない世など、貴方様の必要とせぬ私など、生きる価値もありませぬ」
「貴様はここに生きねばならぬ」
「まだおっしゃいますか。酷いお人だ。」
「………我は再び蘇える。その時は誰より傍に貴様を置いてやろう。」
「それは、真にございますか」
「うむ」
「………ならば、生きましょう。貴方様が私を必要として下さるその時まで」
「いつの世かは知れぬがな」
「百年でも千年でも万年でも、私はお待ちしております。」
「……ほんに、難儀な男め。その言葉、忘れるな。」
「もちろん。お慕い申しておりますよ、信長様」
転生輪廻[銀魂/高杉]
天空を漂う鉄の箱に、異色の二人組。
「ここは、空に近いなぁ。」
「宇宙だからな」
「天の川に届かないかな」
「無理だろうよ。ありゃあただの銀河系だぜ」
「身も蓋もない言い方だな」
「お前そんなロマンチストだったか?」
「俺の記憶だと晋助はかなりロマンチストだったけど。」
「……………」
「織姫と彦星、会えるといいね?」
「…うるせぇ」
「つれないねぇ。」
「………俺には、人の恋路なんぞ応援してる暇はねぇからな。」
「おやおや、風情の無いことで。」
「…………ばか」
「唐突」
「ばーかばーか。」
「子供じゃないんだから、晋助。」
「……うるせぇ。テメェが悪い。」
「ははは、分かってるよ。星ばっか見てないで構って言うんだろ?」
「…………………ばーか。」
「当たりだね。素直に言えばいいのに。」
「うるっせえ。」
「よしよし、おいで晋助」
「ガキ扱いすんなっていってんだろ」
「わがままさん。じゃあとびっきり大人の扱いをしてあげるから、おいで。」
「…エロオヤジ。」
「ははは、助平な晋助君は何を考えたのやら。」
「っ!ばーかばーか!!」
「ほらほら、おいでって。」
「…ふん。」
「良い子だね。」
「ガキ扱いすんな。」
「しないよ。今夜は寝かせてあげないから、覚悟してね?」
「!!」
星空逢瀬2011.07.07
2012.04.16 誤字訂正