短編(♂) | ナノ

会計委員会は昔から徹夜が好きだった。

一つ上の委員長はちょっとねじの緩い人で、帳簿が合わなくて徹夜。

二つ上の委員長は後輩以上の方向音痴で、委員会に辿り着けず作業が進まないから徹夜。

三つ上の委員長は脱力症の根気のない人で、これも作業が進まず徹夜。

四つ上の委員長は真面目な人だったけど、実習に行ったまま帰ってこなくなった。

五つ上の委員長は今の委員長以上に鍛錬好きで、鍛錬だといって徹夜。

そして文次郎。
五つ上の委員長を見習ってしまった奴はあの先輩ほど非道くは無いといえ、確実に鍛錬馬鹿を受け継いで徹夜大好き人間になった。




「なぁ、鍛錬馬鹿。」
「あ?!」
「馬鹿ばか」
「意味が分からん!」

大きな隈を作ってフラフラしながら教科書を睨みつけている文次郎の背中に向かって言ってやる。文次郎はそう怒鳴り返してまたにらめっこ。
せっかくぽかぽか陽気で昼寝日和だってのに、風情の分からん馬鹿だなぁ。

「何日徹夜したんだ馬鹿?」
「馬鹿言うな。…5日だ。」
「またいつになく長いな馬鹿」
「実習やら課題やら重なったんだよ!」
「怒鳴るな馬鹿」
「怒鳴ってねぇだろ」
「怒鳴ってるよ馬鹿」
「てめぇさっきから馬鹿馬鹿うるせえぞ!」
「語尾が馬鹿になっちゃったん馬鹿」
「このやろう!」

怒りが頂点に達した文次郎が勢いよく振り返る。馬鹿だね、そんなことしたら

「ぅっ〜〜〜〜〜!!!」

ほら、眩暈と頭痛と吐き気。
たぁいへん。

「馬鹿だね文次郎」
「っ…てめ、まだ言うかっ」

涙目でおれを睨む文次郎に笑って、襟をつかむ。多少乱暴に部屋から引きずり出して一緒に掴んできた座布団の上に、えいやぁ。

「うぉっ!?」

ぼすっと座布団に突っ伏した文次郎からくぐもった悲鳴が聞こえた。

「一緒に昼寝しよう馬鹿」
「…俺はまだ課題が終わってねぇんだ。」
「課題の前におまえの生命がおわっちゃうよ馬鹿」
「………だから、馬鹿って言うな」
「コンプレックスだもんね?」
「…うるせえ」
「なぁ秀才君、忍者には体調管理も大切なのだよ。」
「……」
「ふらふらじゃないか」

艶のない文次郎の髪を撫でて俺も寝ころぶ。日差しがあたたかい。

「……課題」
「あとで手伝ってやるよ」

まだ起き上がろうとする手を引くとまたぼふっと座布団に沈む文次郎。徹夜で死にかけるたびにおれがこうやって気を使ってやる。だって、すぐ無茶するからね、この馬鹿は。

「ほら、眠くなるだろう?」
「……な…まえ…」

徹夜していないおれだってもう眠い。すぐに文次郎の瞼が閉じていく。

すぅすぅと寝息をたてる文次郎は、ちゃんと年相応に見えた。
最上級生が2人も縁側で寝てたら邪魔だろうなぁ。でもまぁいいか。
きっと伊作あたりが来たら笑いながら布とかかけてくれるし、他の六年も何だかんだ言いながら優しいからみんな同じ。小平太は一緒に寝始めるかもしれないけど。







おやすみなさい
(あ、文次郎と名前寝てる…)
(また徹夜明けか)
(留さん、なにかかけるもの持ってきて)
(はいよー)


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