短編(♂) | ナノ


疲れてるのはわかる。
だから、多少多めに見てやるつもりもある。

「………おい、名前。」
「………Zzzz…」

でも、これは酷いのではないだろうか。















織田軍へ密偵として潜入していた名前が、やっと帰ってきた。
へらっといつもどおりの笑みを見せ報告を終えたこいつが部屋にこもったのが3日前。
最初の一日は、疲れただろうと放っておいた。
二日目も仕方がないと放っておいた。
三日目は、多少心配だったがそっとしておいた。

そして今日、四日目。

「おい!」

目の前には丸く人型に盛り上がった布団。

「名前!!」

名前を呼んでもまったく動かないその布団虫に、蹴りを一発。

「うっ…」

ぼすっといい音を立てて布団がへこみ、くぐもった声が聞こえた。

「……zzz」

それでも彼は起きないらしい。

「…おい。」

ぼすっ

「名前。」

ぼすっ

「おい!」

ぼすっ

何度蹴っても名前は起きない。

「〜〜いい加減にしろテメェ!!」

ついに俺はその布団を引っぺがした。
ごろん、と布団から転がり落ちる名前。
しかしその瞳はしっかりと閉ざされている。

「……名前…」

何故か妙な寂しさがこみ上げる。
ずっと会えなかった。身を案じていても当然便りなど無い。
それがやっと帰ってきたのだ。
しかし、その目に己は映らない。名前を呼ばれることも、温かい腕に抱かれる事も無い。

「………いい加減起きやがれ、馬鹿名前…。」

あぁ、視界が霞む。目頭が熱くなる。
嗚咽を漏らすなんて恥ずかしくて出来ない。だがしかし、少し涙を流すくらいは構わないだろう。
どうせこの部屋にいるのは寝ている名前と己だけ。誰にも見られることは無い。

「……っ」
「………こじゅうろう?」
「!?」

数滴、しずくが滴っただけだった。
焦がれた声が己の名を呼び、声のした方を見れば心配そうな瞳がじっと己を見つめていた。

「小十郎?」
「っ!」

また呼ばれ、涙腺が崩壊する。

「こ、こじゅ!?」
「…っ…この、馬鹿やろっ!」
「ご、ごめん。」

どうせ罵られた理由など分かっていないのだろう。
焦ったように己を抱き締める名前の胸へと頬を寄せると血と火薬と煙草の混ざった匂いがした。

「…馬鹿やろう。」
「うん、ごめん。ただいま。」
「………おかえり。」

鼻を啜りながら名前の背へと手を回す。

「小十郎。」
「ん…。」

耳元で声が聞こえる。愛しげに己の名を呼んだ名前はちゅっと音を立てて俺の首筋へと唇を寄せた。

「…いい?」

俺の帯を解き始めているくせによく言う。

「……好きにしやがれ。」
「うん、いただきます。」

律儀にそう言って俺の肩を押す。
どちらともなく重なる唇。
背中に布団を感じて、俺は名前へと身を任せた。









眠る忍びは涙で起きる
(小十郎が泣くなんてねぇ。)
(な、泣いてねぇだろ…!)
(啼いてたよ。)
(〜〜〜!!!さっさと任務行け馬鹿!)
(はいはい。すぐ帰って来るからね、愛する小十郎のために。)
(………あぁ、必ず帰って来いよ。)





最後デレたこじゅ。
口調が分らん…



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