短編(♂) | ナノ


大きく青い満月の夜
信長様に呼ばれ、離れの屋敷を訪れる。

「信長様」

静かに杯を煽る信長様に声をかけると、色づいた頬で手招きされた。近寄ると強い酒の匂いが鼻を突く。
職業柄鼻のいい俺には少しきつい匂いだ。

「座れ」
「…はい」

ぐいっと袖を引かれ隣に腰を下ろす。途中大量の酒瓶が視界に入り、思わず眉をひそめてしまう。

「飲み過ぎですよ」
「…余に指図するか」
「信長様、」
「貴様も飲め」

突きつけられた杯を渋々受け取ると並々と酒を注がれた。主自らの酌とは光栄だが、俺は酒は好きじゃない。

「余の酒は飲めぬと申すか」

躊躇っていると酷く不機嫌そうに信長様がのぞき込んでくる。

「………いただきます」

仕方ない、覚悟を決めよう。
月を映す水面に波紋を作りながら俺は杯をあおった。
喉を焼く酒独特の苦味に思わず顔を歪める。

「……不味」
「貴様には酒の美味さは分からぬか」

ふんと鼻で笑ってまた俺の杯に酒を注ぐ信長様。仕方なくちびちびと舐めるように飲んでいるとぐいと顎を掴まれた。

「な、にっ」
「…っ、」

触れる唇に口の端を伝う何か。侵入してきた舌を伝って酒が口内に入ってくる。

「…っは、信長、さま…?」
「美味かろう」

目の前で満足そうに歪む信長様の顔。
酔ってるな、こりゃ。

「飲め」

完全に俺の膝を跨いだ信長様は酒を口に含むと口づけてくる。苦い液体が何度も口移しで喉を通っていく。
まったく、嫌いだと言うのに我が儘な人だ。

「……ん、…ふっ………」

鼻から抜ける色っぽい声を聞きながら信長様の背中と頬に手を添える。そして進入してくる舌の仕返しとばかりに、彼の口内へ無理やり押し入った。

「んぅっ…!?」

信長様の身体が震える。気にせずに彼の舌を甘噛みし吸い上げると信長様の身体から力が抜け、すっぽりと俺の腕に収まった。

「………なまえ…」
「ふふ、こうして飲ませていただければ多少酒も美味く感じますよ」
「…是非もなし」

嬉しそうに口の端を上げた信長様がもう一度口付けを強請る。舌も唾液も絡め解け合うほどの口付けに身体が熱くなる。
…若いな、俺。
ゆっくりと服の上から背中、腰、臀部と撫でさすると信長様の体温も上がっていく。
信長様も俺の合わせを握り臨戦態勢のよう。

濃姫様に見つからないことを祈って、信長様の首筋へと唇を寄せた。












…口移しで酒飲ませる信長様が書きたかっただけ。

2012.05.05 修正


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