元親が、頑張ってる。
「名前。」
平和な昼下がり。キッチンに立つ名前の後ろに元親がいる。俺はうとうとする元就に膝を貸してやりながら二人を見る。
元親が名前の服の裾を掴む。うっすらと赤い顔の元親を振り返った名前が「どうした?」と問いかけた。
「…あ、あのよ、名前、オレ…」
「うん?」
もごもごと何か呟いた元親の頭を苦笑いの名前が撫でた。元親の表情が複雑そうに歪む。そして名前の手からリンゴを1片くわえた元親がとぼとぼとリビングに戻ってきた。
…あ、目が合った。
「…残念だね元親。」
「…見てたのか。」
「名前、自分の色恋に関しては鈍いから。」
「……みたいだな。」
しゃくしゃくとリンゴを咀嚼しながら拗ねた元親は「好きだって言ったらリンゴの事だと思われた。」と教えてくれた。む〜っと膨れて名前を見つめる元親。その横顔に、よく恋愛相談を持ちかけてくる女友達が重なった。
それにしても、好きと言えるなんて意外に大胆だ。
「……もう一度言ってくる!」
リンゴを食べ終えた元親はそう言ってまたキッチンへ向っていった。多分、さっきと同じようになると思うんだけどなぁ。
「名前が、好き、だ!」
面白いので2人の会話に耳を澄ませる。元親の告白に苦笑いした名前がまた1片、リンゴを元親の口へ運ぶ。
「ふふ、そんなにゴマすらなくてもリンゴあげるのに。」
ほらやっぱり。
器用に手を使わずに食べた元親。名前の左手を握って、何か不満げに訴える。
「そんなに好きなんだ?」
くすくす笑った名前がまたリンゴを手に取る。それは赤い皮の耳がついたウサギだった。簡単な飾り切りに驚く元親の唇をウサギがつつく。まるでキスするみたいに。
「じゃあほら、特別。」
ウサギに唇を奪われて赤くなっている元親(多分俺と同じ事を思った)がウサギをくわえると名前は悪戯っぽく人差し指を唇の前に立てる。
「他のヤツには内緒な?」
茶目っ気たっぷりにウィンクした名前。今☆がとんだよ!
それを正面から食らった元親の顔が真っ赤になる。幸村の鉢巻みたいだ。
「〜〜〜〜っ!」
何か悶える元親に笑って、名前がその銀髪を撫でる。不満げだった元親の表情が複雑そうに歪む。
そしてよしよしと撫でられているうちに、はにかんだ様な笑顔に変わっていった。もう告白は勘違いされたままでも良いみたいだ。
あーあ、幸せそうな顔しちゃって!
後書き
とろまぐろ様、お待たせしました!
こんなに時間がかかってしまい、本当に申し訳ありません!
リクエストいただいた通りオリキャラも出してみました。というか出張ってしまっ…そして元親が乙女ってない…(土下座)
本当にいろいろ申し訳ないです。
こんな駄文ですが寛容なお心でお許しいただけたら幸いです(^^;;