短編(♂) | ナノ


「先生ー、ベッド貸して」
「あ、名字君…」
「あれ、上履き…。藤来てる?」
「うん、ちょっと前に。」
「先越されたかー。」

三時間目の音楽をさぼろうと保健室に来たら、藤の方が一足早くてさぼり用のベッドが埋まっていた。

「隣のベッド使う?」
「サボリが二つも使ったらマズいでしょ。ソファーでいいや。」
「じゃあお茶煎れるね。」

いそいそとお茶を入れてくれる先生の背中を見ていると微笑ましい。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう」

湯気の立つ湯飲みを受け取ると先生は何やら言いにくそうに俺を見ている。

「先生?」
「…あ、な、何かな?」
「座らないの?」
「ぅ、あ、の」
「先生。」

ここ、と隣を指すと先生の頬が赤く染まる。かわいいなぁ。
先生は小さく頷いて俺の隣に座った。なんだか緊張しているのか背筋が一直線だ。
アラサー(っていうと先生は怒るけど)なのにこの初心さ。俺中学生なのに自分がオヤジみたいに思えてくる。
…何を隠そう、実はハデス先生は俺の恋人だったりする。

「これ食べていー?」
「うん、どうぞ!」
「いただきます。」

菓子うけにある菓子を一つもらう。あ、駅前の店のだ。これ好きなんだよね。

「…美味しい?」
「うん。」
「よかった、名字君前にそれ好きだって言ってたから…」
「…それでわざわざ?」
「………うん。」

はにかむ先生。
みんな怖いって言うけど、どこが怖いんだろう。眼科行ったほうがいいな。

「ありがとう、先生。」
「名前君…!」
「はい、先生も食べよ?」
「ありがとう」

菓子を持ったまま座り心地の良いソファーに二人で背を預ける。先生の緊張もほぐれたっぽい。
肩がしっかり触れ合うくらい寄り添って先生の手を握ったらまた真っ赤になって先生も握り返してくれた。
あぁ至福。
このままずっとこうしていられればいいのにと思いながら、悪戯みたいに先生の頬へキスをした。





 保健室の恋人
(……おい、俺がいること忘れてるだろ!?)
(ふ、ふふふふ藤君っ!?)
(…おいー、邪魔すんなよ)
(うるっせぇ!いちゃいちゃすんな!)


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -