短編(♂) | ナノ

「あれ、名前?次は校庭だよ?」
「あぁ、ちょっと野暮用。先行ってて。」

授業が終わって校庭に移動しようと教室を出たら、名前が一人だけ反対の方へ歩き出した。
声をかけてもそれだけ言って廊下の角へ消えてしまう。

「…名前、どうしたんだろ…。ねぇ留さん、なにか知らない?」
「あー?呼び出しだろ?」

いつも一緒にいる名前が僕らに話さずに行くなんて珍しい。留さんに聞くと、さも当然と言わんばかりの顔だった。

「呼び出し…?名前何したんだろ…。」

最近名前は真面目だし怒られるようなことはしてないと思うけど…。

「いや、そっちじゃなくて。」

僕の隣で留さんがため息をついた。そして「ついて来い。」と言って名前が消えた方へ歩き出す。

「現場見た方が早いだろ。(これで少しは進展すりゃいいが。)」
「現場?」
「そ。とりあえず静かにな。気配も消しとけ。」

どういう事なのかよく分からないけど留さんの後に続いて気配を消す。
…こっちってくの一教室の方…?
なんだか嫌な予感がする。

「…ほら、あれ。」

そう言って留さんが足を止めた。廊下の柱の影に隠れながら指された方を見ると、名前がいた。
だけどその向こうにはくのたまの子がいる。…予感、当たったなぁ…。
相手の子はなかなか可愛い子だ。赤い顔で名前に何か言ってる。
声は聞こえない。でも内容は簡単に想像出来た。
告白したのか、女の子が俯いた。困ったように名前が頭を掻く。
そして何か言ったみたいだった。
女の子が顔を上げ安堵したように表情を緩める。

「………名前…。」

(何してんだあのバカ!)

後ろで留さんが変な顔をしてた。でもそこまで気が回らない。
胸が、いたい。苦しい。
赤い顔で女の子が笑う。会話が弾むのか名前も笑っていた。
あぁイヤだ。あんな名前見たくない…!
目頭が熱くなる。視界が揺れた。どうしよう息が苦しい。
いやだいやだいやだ!
そんな子に笑顔向けないでよ名前!!

「っおい伊作!?」

留さんの制止も聞かず気付いたら飛び出していた。
突然現れた僕に二人が驚いている。

「名前次校庭だよ。遅れるだろ!」

二人を見ないように俯いたまま名前の手を掴む。
女の子が狼狽えても僕の知った事じゃない。

「あ、ごめん、じゃあ!」

名前が律儀に手なんか振ってる。なんだよ名前のバカ!

走って走って、校庭に出た。後から追ってきた留さんが僕らを見て困った顔をして「二人で話してから来い。」って言ってみんなの方へ行ってしまう。
僕はやっと名前の手を離した。
今度は逆に名前の手が俯く僕の手を掴む。

「伊作?」
「…………ごめん。」
「いや、いいけど…。どうしたんだ?」

…本当どうしたんだろ僕…。
名前があの子と一緒にいるのが嫌だった。
笑っているのが嫌だった。
二人が付き合うのかと思ったら、いてもたってもいられなくなった。

「………あの子と、付き合う…?」

ゆっくりと名前を見る。
名前が僕を見て驚いている。

「伊作…泣くなよ。」

名前の指が僕の目元を拭う。その指が濡れていて、自分が泣いているのだと気付いた。

「あの子とは付き合わない。あれ罰ゲームだったんだ。だから、泣くな。」

困ったみたいな優しい名前の顔を見たら、胸の痛みも苦しさも嫌な気持ちも消えていく。
その代わり、動悸が激しい。
名前に握られている指先から熱が広がってくる。

「伊作?大丈夫か?」

気付いてしまった。

「…うん、ごめん。」

僕は…――

「そうか?じゃあ授業行こう。」
「うん。」

名前の手が僕の頭を軽く撫でる。
名前に手を引かれたまま僕らはみんなに合流した。









2.好きかも、しれない
(好き、だ、名前…。)
(どうしよう…)
(真っ直ぐ名前の顔が見れない…。)






ちょっと伊作が依存気味?




(C)確かに恋だった


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