奴は、長次と争う六年の長身男である。
「はは、留は小さいな。」
「やかましい!一寸ちょっとしか違わねぇじゃねぇか!」
「はははっ!」
げらげらと笑う名前が近くにいた伊作を捕まえた。そしてぎゅっとその腕に抱き締める。
「あはー、伊作も小さい!」
「名前、力強すぎだよ。」
苦笑しながら伊作は名前に抱きつく。
「伊作!どさくさにまぎれて何やってる!?」
「もー、羨ましいなら素直に言いなよ留さん。」
「誰が羨ましいかっ!」
「貴様らやかましいぞ。静かにせんかバカタレ!」
そこへ怒鳴りこんできた文次郎。お前も十分に五月蝿いぞ。
「お、次がきた!もんじろー!」
「うわっ!?何だ名前!?」
伊作を解放し、今度は文次に抱きつく名前。
「騒がしいよ名前。」
「あ、せんぞー。」
「なにしてんだ?」
「………。」
なんだよ、六年みんな集まっちまったじゃねぇか。
「小平太も長次もいらっしゃい!」
そう言いながら名前は仙蔵へと抱きつく。
「仙蔵相変わらず細いなぁ。あと良い匂いする。」
「ふふ、そうだろう?」
よしよしと名前の頭を仙蔵が撫でていると小平太が名前へと飛びついた。
「名前ー!私も私も!ぎゅーっ!!」
「はいはい、こへは可愛いねぇ!!」
2人でぎゅー!とか言いながら抱き締めあう。子供め!
「長次もぎゅー!よし、あと少しで追い抜く!」
「……。」
「ふっふー、俺のが背高くなった暁にはこれでもかってくらい抱きしめてやるぞ!」
ほんのりと長次の顔が赤くなった。何照れてるんだ長次!
どたばたと騒ぎまくった六人は騒ぎ疲れたのか、しばらくして1人2人と部屋に戻っていった。
……あれ?俺だけ抱き締めて貰ってない…。
「じゃ、僕はちょっと文次郎たちの所に用があるから。」
そう言って伊作は部屋を出て行った。
「……おい、名前。」
「んー?」
いつの間にか敷かれた俺の布団の上で名前がごろごろしている。
くそ、口に出すの恥ずかしいな!
「……俺、抱き締められてないぞ。」
「…おやまぁ。」
どこぞの穴掘り小僧のような言葉を呟いて、名前は自分の隣をぽんぽんと叩いた。
「ここ、留、ここねー。」
俺の布団だ。と言いながらも名前の隣へ入る。
「!」
「はい、ぎゅー!」
布団の中で、抱きしめられた。
「もー、留ってば焼き餅?可愛いなぁー!」
「ばっ、違う!苦しい離せ!」
「やだー!このまま寝る!」
ふにゃりと嬉しそうに笑いながら名前は俺を抱き締めたまま目を閉じる。
「…おやすみ。」
「うん、おやすみ!」
俺も名前の胸へ頬を寄せて目を閉じた。
負けず嫌いな彼の明るい恋人。(伊作、戻らないのか?)
(戻ってもお邪魔になるだけだからね。)
((なるほど。))