短編(♂) | ナノ



我が儘な奴が帰ってきた。

「名前。」

久しぶりな彼は相変わらず横暴で

「すぐに部屋に来い。」

徹夜明けの俺は問答無用で呼び出された。









通い慣れたクロスの部屋。ノックして扉を開けると酒の臭いがする。

「クロス、」
「遅ぇ。」

不遜は態度でベッドに座るクロスの隣へ俺も座った。

「あまり飲むなよ、昔みたいに倒れるぞ。」
「大きな世話だ。」

言いながらボトルを煽ったクロスは、寄りかかるように俺の肩に頭をのせた。
長年の付き合いで、それはクロスが甘えたい時の仕草だと知っている。
いや、俺だから分かる。

「久しぶりだなぁ。怪我とかない?」
「…ねぇよ。」

よしよしと髪を撫でてやると心地よさげに目を細める。
こんなクロスの姿を見られるのは俺だけだ。
低体温の体を抱き締めて押し倒す。
肩口へ顔を寄せるとクロスの手が俺の髪を撫でた。

「あー、ほんとクロス久しぶり…。」
「俺がいなくて寂しかったか?」

からかうような声が耳元でする。

「寂しすぎて気が狂うかと思った。」
「…馬鹿が。」

素直に返した俺にクロスは照れたらしい。
はにかむような罵倒が小さく聞こえ、俺の背中へ腕が回った。
お互い抱き締め合う形でベッドへ沈む。

「あー、クロスの匂いヤバい。」
「何がヤバいんだ何が。」
「めちゃくちゃ癒される…。」

クロスの匂いが肺を満たす。
幸福と安心に包まれると急激に睡魔が襲ってきた。

「…ごめ、クロス…も…」
「…名前?」

心配そうな、いぶかしげな、微かに期待の含まれた声。
あぁ、ごめん、起きたら何でも聞いてあげるから。

「…寝かせてくれ…」
「…。」

最後の一言をやっと絞り出した俺はそのまま意識を手放した。
呆れたのか怒ったのか、クロスが何も言わなかったのを良いことに、俺は朝まで睡眠を貪った。









翌朝、目を覚ました俺の腕の中でちゃんとクロスは寝ていました。









心の休まる場所
(起きたか。)
(おはよう、クロス。)
(あぁ。ずいぶんよく寝られたようじゃねぇか。←嫌味)
(うん、クロスと一緒だから安心できたんだ。久しぶりにちゃんと寝たよ。)
(……そうか。)
(…あ、クロス照れてる。)
(…うるせぇ。)
(あいて。)




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