短編(♂) | ナノ


「………何をしていた。」

断崖絶壁。崖っぷち。

「…………答えられないのかね?」

まさに、絶体絶命。









魔法薬棚の裏事情









その日、やっと仕事から解放された俺は恋人であるセブルスの研究室へと足を運んだ。
俺の仕事は新しい魔法薬や魔術の研究だ。
だからいろいろと貴重なものがそろっているセブルスの棚はもの凄く興味深い。

「……これ、この前は無かったやつだ…。後で分けてもらお。」

と、そんな感じで棚を物色していたわけだが…。

   ばんっ!!

「「こんにーちわー!!」」
「!?」

  がしゃん。

唐突に開いた扉に、俺はマジに驚いた。
いや、セブルスは棚をいじっているとかなり怒るから…。

「あれ?なんだ。名前じゃん。」
「やっほー。何してるのさ、こんなとこで。」
「…って、お前らかよ。焦って損した。」

部屋に入ってきたのはウィーズリーの双子だった。
安堵のため息をついた俺は、ふっと足元を見下ろした。
…………まずい。
足元に散らばるガラスの破片。
薄緑がかった液体と異臭。
そして、蠢く蔦の様な物体!

「ちょっ!何それ名前!」
「うるさい!さっきお前らが入ってきたときにビン落としちまったんだよ!!」
「うわ〜それ新しく入ったやつでしょ。スネイプ怒るぜ!」
「お前らのせいだっつの!てか、なんでお前たちがセブルスの棚を把握してるんだよ!」
「「え?だって僕ら、よくここから薬くすねるし。」」
「だから俺が怒られたんかい!!」

少し前にこの棚を見ていたらセブルスに思いっきり怒られた。
勝手に持っていくなと言っただろう!!と。俺に心当たりはなかった、とりあえず大人しく怒られておいた。
あのときのセブルスは本気で怖かった。

「名前!」
「げっ!!」

フレッドの声に視線を落とすと、あの変な蔦が俺の足に巻きついてきていた。

「気色悪ぅ!!」

ぎゃー!っと抱きついてくるジョージ。

「動けないだろ!」
「名前!危ないよ!」

ついでにフレッドも飛びついてくる。

「くっそ!このやろ!」

   ばたんっ  ばしゅぅ…っ!

片足を蔦に絡めとられたままフレッドとジョージを受け止めた俺は床に倒れこんだ。
すぐさま杖を構え蔦を焼く。……足熱いな。そして腰痛い。

「さすが名前だね〜。」
「すばやかったね〜。」
「「格好いいよ!!」」
「………とりあえず、退け。」

右腕にフレッド。左腕にジョージ。
………重いんだよ二人とも。

「え〜もうちょいもうちょい。」
「なんでだよ?」
「面白いことになるから。」
「は?」

なんなんだ、と思っていると二人に力いっぱい抱きつかれる。
本気で何がしたいんだお前ら!

「いいから放せ……」
「…………何をしている?」
「!?」

唐突に背後から聞こえた低い声。それは紛れもなく愛しい恋人のもので…

「セブルス!」
「………我輩の部屋で、ウィーズリーの双子と何をやっているのかと聞いているのだ。」
「え?あっ!」

つめた〜いセブルスの視線に自分の立場を理解する俺。

「これはその…こいつらが…」

言い訳を考えるもどう言っていいか分らない。
絶対にあの蔦を燃やしたこと怒ってるし!

「「バーイバーイ!」」
「って、おい!」

俺がおろおろしているうちに、双子はさっさか部屋を出て行った。

「………何をしていた。」

低いセブルスの声。

「…………答えられないのかね?」

やばい。本気で怒ってる…。

「………セブルス…?」

そう思ってセブルスを見つめると、泣き出しそうに瞳が揺れていた。
……え、あの蔦ってそんなに珍しかったの?!

「ごめんセブルス!その、部屋来たらお前いなくて棚見始めたんだけど!」

立ち上がって弁解を始めた俺に、セブルスは視線をそらした。

「そこにあいつらが来て驚いてビン落としちゃって!」

ん?と、セブルスがおかしな顔をする。

「いや本当、あの蔦がそんなに珍しいものだとは思ってなかったんだ!」
「………何の話をしている?」
「え?……蔦を燃やしたこと怒ってるんだろ?」

お互いに呆けた顔をして見詰め合う。
……あれ?違った?

「……人の話を聞いていなかったのか。我輩は、ウィーズリーの双子と何をしていたのかと聞いたんだ。」
「あ、そっち?蔦に絡めとられてそのまま倒れたんだけど。」
「……。」
「嘘じゃないぜ!?さっきの状況は2人が面白がって抱きついてきたんだし…。」

ジト目のセブルスに必死に弁解する俺。

「信じてくれよ、セブルス。俺にはお前だけだから……。」
「……ん…」

こいつの機嫌を直すには、これが一番成功率が高い。
細い腰を抱き寄せて、囁きながらキスをすれば身を任せてくれる。
そのまま深くセブルスの口内を味わってから離れると、ほんのりと赤い顔したセブルスに睨まれた。

「………信じてくれる?」
「……………まぁいい。」

聞けばなかなか可愛くない返事。
でも表情が可愛いからすごく可愛く聞こえる。

「次にやったら許さない。」
「もう絶対にしないよ。」

ぎゅっと抱き締めて髪を撫でる。
よくセブルスはねっとり髪だと聞くが、そんなことは無い。
ぱっと見そうかもしれないが、なかなか猫っ毛で手触りも良い。

「セブルス…。」
「………あぁ。」

機嫌の直ったセブルスに内心ほっとしながら、俺はまたその唇へと深く口付けた。







「……で、この破片はなんだ?」
「…変な蔦が入っていたビンの残骸です。」
「…あれはついこの間手に入れたばかりだぞ!」
「ごめん!!」
「次の時、同じものを持ってこなかったらもう二度と部屋に入れん。」
「えぇ!?」
「当然だ!」
その1週間後。
やっとの思いで蔦を手に入れた俺がセブルスに会いに行ったのは、言うまでも無い…。


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