青い空、白い雲、暖かい太陽。
昼寝日和のその日、俺は学園内の林のそばで綺麗な緑の芝生の上に寝転がっていた。
今は授業中なのでここを通る人はいない。
あ、俺?俺はほら、サボり。
5年ろ組に所属する俺は自習なのをいいことに教室から逃げ出してきたのだ。
真面目な下級生の頃とは違って5年ともなれば座学より実技。実技より実戦と、考え方が変わる。
今ごろ教室で真面目に座学に励んでいるのは迷い癖のある級友くらいであろう。
変装の名人と言われる変人は今日も他人の顔で誰かを驚かしている。断言出来る。
(…噂をすれば。)
知った気配が近づいてきてサクと草を踏む音がする。
寝転んだまま音のほうに目を向ければ俺が笑顔で立っていた。
「名前。」
そして、三郎の装う俺は本物が見せるはずのない表情で俺の隣へ座り込んだ。
「サボりか?」
「うん、抜けてきた。」
「雷蔵は真面目にやってただろ?」
「…サボるか悩んでたよ。」
「相変わらずの悩み癖だな。」
机の前で悩む友人が容易に想像できて笑う。
すると、何を思ったのか三郎は雷蔵へと顔を変えた。
まぁ、これが一番多いので己の顔でいられるよりは違和感無いが。
「三郎?」
「名前は雷蔵好きだよな。」
「?」
「俺が雷蔵やってやろうか?」
人の良い笑みの雷蔵は俺の顔の横へと両手をつく。
「何してんの三郎?」
「名前が雷蔵の話ばっかするからだろ!」
「うわ、吠えるな吠えるな!」
不機嫌に俺を見下ろす三郎。
その背中に手を伸ばし支えの腕をはらう。
呆気なく体勢を崩した三郎をそのまま抱き込んだ。
「俺が好きなのは雷蔵じゃなくて三郎だよ?」
「…。」
「誰の顔でも関係ない。俺は三郎が好きだから。」
小さく音をたてて三郎の額に口付ける。
まだ雷蔵の変装のままだが、俺にはしっかり三郎が見えている。
うん、愛の力だね。
「焼き餅焼いたんだ?」
可愛いなぁ三郎は。そう言って抱き締めたら三郎の手が俺の背中に回った。
「…バカ名前。」
「はいはい、ごめんね?」
あーもう、ホント可愛い。
緩む頬を誤魔化すように笑いかけるとはにかんだ三郎も笑い返してくれた。
どちらともなく瞼を閉じる。
腕の中の温もりを感じながら、俺は意識を手放した。
その後、俺と雷蔵が抱き合って寝ていたと言う噂が広まり一悶着あったのはまた別のお話…――
顔なんて所詮皮一枚。兵(…おい雷蔵、お前)
雷(うん、分かってる。もう諦めるしかないんだよ…。)
――名前と三郎(顔:雷蔵)いちゃつき中――
兵(…まぁ、元気出せ。)
雷(はぁー………うん。)