最後の砦 ver.名前
あいつは愛を囁かない。
軽い言葉も真面目な言葉も
「…馬鹿が。」
すべてその一言で流されてしまう。
「…俺もだ。」
なんて、死んでも言ってはくれないだろう。
「…名前。」
名前を呼ばれるのが好きだ。
抱き締めてもキスをしても本気で抵抗しないから、思わず先へと進んでしまう。
「ひっ…やめ、もっ……ぅあ、ぁぁっ…!」
情中の声や仕草は俺の理性を失わせ、背中につけられた爪痕さえも愛しい。
『愛してる。』
シャマルは気持ちを認めない。
しかし熱を帯びた瞳が、絡む指が、重ねた身体が、口より雄弁に語ってくれる。
可愛い人(言葉なんていらない。)
(今のままの君が好きだから。)
(傍にいられれば、それで良いんだ。)