短編(♂) | ナノ

(主死ネタ)






無理だろうとは思った。

あいつは子供の頃から泣き虫で、いつも俺の後をついて回っていて。

だから、俺が死んでも泣くななんて約束

きっと無理。









「名前さんっ!!名前さん…っ!!!」

腹に走る鋭い痛み。

自分でも、血が流れていくことが分る。

「すぐ、すぐに十代目を呼んで来ますからっ…!」

半泣きで俺の名前を呼んでいたお前は、そう言って立ち上がる。

(……怪我、無さそうだな…。)

雨の中、ぼやける視界にお前をおさめて俺はそんなことを思った。









その日、俺は珍しく2人1組の任務に出ていた。
いつもは単独行動の任務ばかりだが、今回は特別。

「名前さん!」

なんたって、組むのはこいつだから。




「……任務完了。…戻るか。」
「はい!」

一通り仕事を終えて、廃ビルから雨の中へと踏み出したその時。

「名前さん!!」

   ドンッ…!

俺は薄暗い視界の敵に気づかずに、撃たれた。

「…へ…へへッ…サマァミロ…」

  パシュンッ…

もちろん反射的に銃を抜いて、俺はそいつを撃ち殺した。
だけど重力には逆らえず、水溜りへとダイブした。

(……このスーツ、気に入ってたのに。)

そんな場違いなことを考えながら、地の流れ出す傷口を押さえる。

「名前さん!!大丈夫……ッ!?」

駆け寄ってきたあいつは、俺の服を染め始めた血に目をむいた。

「名前さんっ!!名前さん…っ!!!」

そして何度も何度も俺の名を呼んで、終いには半泣き状態。
おいおい、ヒットマンが情けないぞ。

「すぐ、すぐに十代目を呼んで来ますからっ…!」

ばしゃばしゃと雨の中を走っていくあいつ。
あぁそうだ。そのまま逃げてくれれば…

「………なぁ、頼む。俺が死んでも泣くな…。」

聞こえるはずはないと分っていても、最後だと思うと言葉は止まらなかった。

「笑えとは言わないから…泣かないでくれ…よ……」

視界の端で、あいつが振り返るのが見えた。

「…愛してる、ランボ…」






「お疲れ様、名前。」
『どーも。ツナ。』
「ねぇ、名前。君だろ?ランボに泣くなって言ったのは。」

葬儀の時、必死に泣くのを堪えていたよ。

『……そうか。』

墓標にそう言って苦笑したツナに、俺はいつもみたいに笑った。








無理だろうとは思った
あいつは子供の頃から泣き虫で、いつも俺の後をついて回っていて。
だから、俺が死んでも泣くななんてのは
きっと無理。



だけど、



守ってくれると思った。
あいつはいつも一生懸命で素直で、約束を破るなんてなかったから。

『泣くな。』

その言葉の意味を、お前が理解してるのかどうかは知らないけど
泣かないでいてくれた。



涙を堪えてたって言うのは多めに見るから、出来ればお前が泣くのは、これで最後にして欲しい。
これからも、俺はお前を見守っているからさ。







  頼むから、泣くな
(次に会うときは、必ず笑顔で)


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