むらさき用
「
○ちん」
俺の名前を呼んだ紫原がのそりと覆いかぶさってくる。ソファーの肘掛けに寄りかかって本を読んでいた俺は紫原を見る。
なんだと返事をする前に、紫原の薄い唇が俺の頬に押し当てられた。
「
○ちん、甘い」
「甘いわけないだろ」
「甘いよ」
満足そうに笑った紫原が、そのままだらんと俺の上に寝る。
2mもある男に圧し掛かられて大変重いのだが、肩口に甘えるように擦り寄られると可愛くて何も言えない。
長い腕が俺の背中に回る。
ギュッと抱きつかれて、すこし苦しい。
「どうしたんだ紫原」
「別に。甘えてるだけだけど」
「甘えてんの?」
「甘えてんの」
「…珍しいな」
ぎゅうぎゅうぐりぐり
抱き締めろと言わんばかりに押しつけられる頭を撫でると腕の拘束がわずかに緩む。
「………それより
○ちんさぁ」
「ん?」
「学習能力ないわけ?」
「…唐突だなぁ」
頭に俺の手を乗せたまま首をもたげて俺を睨んだ紫原が「名前」と呟く。
「敦って呼んでって言ってるじゃん」
拗ねた顔でそう言って、紫…敦は、あ、と大きな口を開ける。
「次紫原って呼んだら、
○ちんのこと食べるから」
「…敦が言うと冗談に聞こえねー」
「俺本気だし」
がぷと敦が俺の首を甘噛みする。
「くすぐったい」
「………」
俺の反応が気に入らなかったらしく、首に僅かな痛みが走る。
のそりと離れた敦は俺の首をつんつんと指で示して抑揚なく言う。
「
○ちん、おれの。」
なるほど、さっきの痛みはキスマークか。
また俺の上に戻って肩口に寄りかかろうとする敦の首を無理やり持ち上げる。
なに、と睨まれるのも気にせず俺は敦の首筋へ唇を寄せた。
「…
○ちん」
不思議そうに俺を呼ぶ声を聞きながら、俺は白い肌に強く吸い付いた。
「っ」
頭の上で息をのむ気配がする。
敦から離れると赤く痕がついていた。
「これで、敦も俺の。」
そう言って俺が微笑むと、敦は気だるげな目を丸くして、目尻を緩める。
そして、嬉しい、と言わんばかりの幸せそうな表情で、ふわりとほほえんだ。