短編(♂) | ナノ


(庭球/赤也)







「名前頼む!」

俺の前で両手を合わせ懇願する赤也。

「名前、引き受けるなよ。」

赤也の隣で俺を睨む真田先輩。

「ふむ、赤也の為にならないからな。」

真田先輩の反対側にいる柳先輩の視線が俺に突き刺さる。
なぜだ。先輩は目を閉じているはずなのに…!


今俺は、赤也と真田先輩と柳先輩に囲まれている。
今日は夏休み終了3日前。
テニス部に差し入れに来た俺は、親友である赤也に宿題を手伝って欲しいと頼まれたのだ。しかしそれを聞きつけ現われた二人が当然それを許すはずはなく、今に至る。

「名前〜っ…!!」
「「名前。」」

泣きそうな顔で俺を見る赤也。
同じ年だが弟的存在の赤也を見捨てることはできない。
かといって、テニス部三強の二人を相手に勝てるとは思わない。
俺は、苦肉の策をとった。

「…赤也、」
「受けてくれんのか?!」

それは、赤也次第。

「赤也が、俺の言うこと聞けたらね。」
「も、もちろん聞くぜ!」

先輩方の視線に射殺されそうになりながら、俺は赤也を指差し、その指を床へと向けた。

「土下座、して?」
「!」
「…ほう。」

俺の一言に先輩二人が驚嘆の声を漏らす。
けれど赤也はそんなことでいいのかと言わんばかりに床に正座した。

「お願いします!」

そして深く一礼。
……こんなに素直にやるとは思わなかった。
唖然とする俺たち三人の前で、赤也は俺を見上げる。
俺は床に向けた指で数回円を描いた。
次は、これ。

「三回回ってワン。」

そう言うと、その場でくるくると回り始めた赤也は、三回回ってワンっと可愛く鳴いた。
……これは、引き受けないわけにはいくまい。

「…あと3日で頑張って終わらせような、赤也。」
「手伝ってくれるんだよな?!」
「もちろん。」
「サンキュー名前!!」

嬉しそうな赤也が俺へと飛びつく。
…部活後だから汗臭い。
こっそり赤也に清汗剤を吹きかけながら先輩二人を見ると、とても複雑そうだった。






プライドないの?
(…先輩はそんなに嫌か?)
(嫌だね。地獄だ!)
(……土下座できるほどか。)
(名前だからな。他の奴にならしねぇよ。)
(赤也…可愛い奴!)


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -