長編 | ナノ


如し


キィン…と 耳元で高い音がしました

それは聞き覚えのある音です

たとえば 鍵と鍵がぶつかるような

たとえば 包丁を床に落としたような

たとえば 文次郎君と留三郎君の喧嘩で聞くような





「……………え…?」




視界の端に映る鈍色のそれ

すこし顔を動かせば 頬からほんの数ミリ

突き刺さっている クナイ


その柄には 綺麗な和柄の布が巻いてありました

文次郎君が言ってた

こうしておくと 滑らないんですって

彼は 紺色の布を巻いていたなぁ



「ひっ…!」


そんな現実逃避は 頬を掠めた風にかき消されました


私の顔の両横には 冷たいクナイ

そして目の前には……………







わたしは しあわせをのぞんだだけでした

だれかのたいせつなひとをとるつもりも

だれかをかなしませるつもりもありませんでした

だから おねがい

いたいの やめて






あの時とは違う 静かな世界は

また あかいろに そまりました







 


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