あ
彼女は、ある日突然現れました。
「瀬水ひかりです!」
優しい声と明るい笑顔。
幸せに満たされて育ったような彼女に、瞬く間に学園の誰もが彼女を好きになりました。
それは己の恋人も例外ではありません。
「・・・せん、ぱい・・・?」
「すまない。」
大好きでした。
愛していました。
初めて見た瞬間に恋に落ち、何年もかけて実らせた恋でありました。
「名前、すまない。」
けれど、
「私は、彼女を好きになってしまった。」
その恋が散る瞬間は、じつに呆気なかった。
わたしのことはきらいですか。
かのじょのなにがいいのですか。
となりにいることさえも、ゆるしてはもらえないのですか。
言いたいことがたくさんありました。別れたくないのが本心です。
「すまない。」
けれど繰り返される言葉に何も言えません。
先輩を困らせるようなことはしたくないからです。
「・・・分かりました。」
貴方がそれを望むなら、
「別れましょう・・・。」
私の想いなど、どうでもいいのです。
「幸せに、なって下さいね。」
私は、上手く笑えていますか。
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