長編 | ナノ


四晩目


翌日も遅くまで鍛錬に付き合わされるかと思っていたら、委員会があるのだそうだ。
可哀想に。
欠伸をかみ殺し帳簿整理する後輩達が目に浮かび、私は自然とため息をつく。
あまり遅くなると文次郎のためにも後輩のためにもよくないので、迎えに行くことにした。



「お邪魔するよ。」

会計委員会の部屋へ行くと、案の定ギンギンの文次郎と死にかけている後輩達がいた。

「文次郎、もう寝るよ。」
「あぁ、先に寝てくれ。」

帳簿片手に算盤をたたく文次郎がそう答えるが、そんなの許さない。

「文次郎も一緒に寝るんだよ?」
「俺はこれが終わったら寝る。」
「そんなこと言って、どうせまた徹夜でしょ?」

ぐいと文次郎の襟首を引っ張ると、筆がいやな音を立てた。
聞こえたべしゃりという音に、文次郎の手元を覗き込むと墨の海と化した帳簿があった。

「あ、ごめん。」
「なっ、なっ…!」

文次郎が怒りにふるふるしている。

「名前っやっていいことと悪いことがっ!」

ぎっと私を睨み上げた文次郎がそう怒鳴りかける。

「ちょっ、委員長!」
「退け田村!」
「もう遅いんですから!」

そこへ四年の三木ヱ門が飛び込んできた。
ふむ、常識のある子だ。
もう一度「すまない。」と素直に謝れば、文次郎はそれ以上何も言えなくなった。

「ありがとう、三木。」
「いえ。」

軽く三木ヱ門の頭を撫でる。

「さ、寝よう文次郎。後輩達ももう疲れただろう。」
「このくらい!」
「元気なのはお前くらいだよ文次郎。」

欠伸をしている後輩達を示す。

「…あ、すみません委員長…。」

慌ててみんな口を閉じるがもう遅い。しっかり見たよ。

「ね?」
「……くっ、仕方ない。今日はここまでだ。」
「…や、やった!」

もう遅いけれどいつもよりはずっと早く終わった委員会に下級生達が万歳する。
微笑ましいなぁ。
会計委員の片づけを手伝い、長屋へ戻る後輩達を見送る。
最後に三木ヱ門がぺこりと一礼して戻っていった。

「いい後輩だね。」
「まぁな。」

皆良くやってくれる、と笑う文次郎は父親に見える←

「さ、寝ようか。」
「あぁ。」

二人で部屋へと歩き出す。
もう遅いのでまた文次郎の布団はもってこられない。
今夜も二人で寝られそうだ。



 


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