6
「な、なんと!お湯が出ているぞ佐助ぇ!」
あの後。
「べっ!なぜか苦辛いでござる!」
武器回収後、分担して幸村達を風呂に入れることになった。
俺は佐助と幸村と元就担当なんだが…
「ちょ、旦那!風呂場で暴れないでよ!」
「さ、佐助ぇぇぇ!なにか目に入った!染みるでござるぅぅぅ!」
「うるさい!こっちこい幸村!」
それはもう大騒ぎである。
シャワーからお湯が出ることに驚き泡舐めて苦いと叫びシャンプーが目にしみたと騒いでいる。
まさに、子供。
しかもやんちゃすぎて手に負えないようなガキだ。
「動くな幸村!」
とにかくイスに座らせ頭の上からお湯をかける。
「これも修行の内だぞ。」
そう言ったらおとなしくなった。
便利だな修行。
幸村の茶色い髪をわしゃわしゃとかき混ぜながら然り気無くその体へと視線を移す。(おい、変態とか言うな!)
白い肌に無数に残る傷。
それは嫌でも戦国の悲惨さを思い知らされた。
先に湯船に浸かっている佐助の体も酷かった。いや、幸村よりも傷は多かったし深かった気がする。
(…忍ってのは大変な仕事だろうしなぁ。)
幸村がやっと洗い終わったので湯船へ入るよう示し、代わりに佐助を呼ぶ。
「俺様一人で洗えるよ。」
そう言いながら不服そうに俺の前へ座った佐助の頭からお湯をかけてやった。
「ぅわっ!?」
「ほら、大人しくしてろー。」
暴れようとする佐助の肩を掴んで固定し、シャンプーをかける。
「ちょ、乱暴にしないでよ!?」
うわっと叫びながら耳に水が入らないよう手で塞ぐ佐助。
…今度シャンプーハットでも買ってやろうかな。
短い分幸村よりは洗いやすい。
「うっわ、黒い泡。」
ぐしゅぐしゅと泡立てると黒い泡がたった。
幸村も綺麗ではなかったが佐助はその比ではない。
「…お前ね、風呂入ってる?」
「…今入ってる。」
「そういうことじゃないよ。」
まったく、と呟いてお湯をかける。とりあえずもう一回シャンプーだな。
「先生ー!」
二人を風呂からあげて先生を呼ぶ。
「はいはい、準備万端ですよ。」
「じゃあとりあえず猿飛よろしく。」
「来い、猿飛。」
洗面所にはありったけの足拭きマットを敷き詰めてある。
「幸村はこっち。」
置いてあるバスタオルで幸村の髪を拭いてやる。
「うわ、ちょ!」
佐助は先生に拭かれてるが…先生乱暴すぎ。
服はとりあえず俺たちのを貸すことにした。
「はい終了。」
「かたじけないでござる!」
「じゃあ次元就…」
「我は一人でよい。」
使い方だけ教えよ、と言われ俺はシャワーとシャンプーや石鹸の説明をする。
まぁ一人で良いってんなら楽でいいが。
「気を付けてな。」
「我を誰と思っておる。」
ふん、と鼻をならした元就に俺たちは脱衣場から追い出された。
出てきた元就を他に任せ、俺はリビングへ戻った。
次は他の担当で慶次と小太郎。
先生に案内され、佐助と幸村は部屋へ行った。
リビングには元親一人しかいないのでたいへん静かだ。
「…なぁ」
「ん?」
じっとテレビの前に座り画面を見ていた元親が俺を振り返る。
「……なんで、そこまでしてくれんだ?」
「…?」
テレビの仕組みを気にしていたと聞いたので、てっきり構造か何かを知りたがるかと思ったのだが。
突然どうしたのかと思ったら「出ていけ!」と言う声がテレビのスピーカーから聞こえてくる。
見れば今人気の若手俳優が家を追い出されている所だった。流行りの人情ドラマだ。興味がないから見てはいないが。
…なるほどテレビの影響か。
「さぁ?何でかな。」
肩をすくめてソファーに座る。
俺を見つめる元親はまるで「待て」をする大型犬だ。。
「…答えになってねぇ。」
「自分でもよく分からないんだけどねぇ。」
俺の答えに眉を寄せる元親。おやおや美人が台無しだ。
「何か訳ありみたいだったから、かな。」
それに面白そうだったし、と続ければぽかんと間抜けな顔をした元親は、一拍おいて笑いだした。
「そんな簡単に大勢住まわせちまうたぁ酔狂な奴だ!」
「そうだな、酔狂かもなー。」
あまりに快活に笑う元親に、俺も笑った。
それから他が俺を呼ぶまで二人で戦国と現代の事をお互いに話した。
どうやら元親はカラクリや機械が好きらしい。
「名前、もう出るとさ。」
「はいよー」
ちょうど話の区切りのいいところに先生が来たので俺は後を任せて風呂場へと向かった。
「あ、名前ー。風魔お願い。」
「はいはい。」
風呂場には風魔と前田がいて、他が前田の長髪に苦戦していた。
「風魔。」
がしがしと乱暴に頭をふく風魔からバスタオルを受け取り丁寧に拭いてやった。
「はいオッケー。」
元通り前髪で目を隠した風魔はぺこりとお辞儀する。
風魔と前田を着替えさせ風呂場から出る代わりに先生を呼ぶ。
後は片倉さんと元親だけだ。
「他、部屋案内してやって。」
「うん。」
他が二人を連れて二階へ上がる。
俺は先生に声をかけてから、片倉さんを呼ぶべく客間へと足を向けた。
「片倉さん。」
客間に入ると片倉さんが相変わらず神妙な面持ちで座っていた。
「風呂入ってきてください。」
「…あぁ、」
返事はするものの、立ち上がる気配はない。
「伊達さんは俺が見てますから、ね?」
そのままじゃ寝られませんよ。と声をかけて片倉さんの肩に手を置く。
ね?ともう一度促せば、渋々ながら片倉さんは立ち上がった。
「…すまねぇ。」
「いえ。」
風呂の位置を教えて片倉さんを見送る。
さて次は、伊達さんの看病か。
≪ + >