長編 | ナノ


5


「さて、じゃあ部屋割りな。」

夕食を終えて少ししてから。時計を見ればすでに9時を過ぎていて、幸村や元就はうとうとしている。

「とりあえず、片倉さんは客間で伊達さんと一緒。」
「あぁ。」

あとは…

「あ、名前ー俺らで決めたよ〜。」

戦国組を見回せば、はいはいと他がよってきた。

「あぁ決まったんだ?」
「うん。」

そして座っている幸村たち交指差す。

「真田と猿飛が一緒で、」
「…だって、旦那。」
「うむ、よろしく頼むぞ佐助!」
「長曽我部と前田が一緒で、」
「でかいもの同士だね元親さん。」
「いろいろ聞かせてくれよ風来坊!」
「もちろん!」
「毛利と風魔が一緒。」
「騒がしくなくて良い。」
「………。」

指差され同室の奴らと顔を見合わせる面々。
うん、けっこう良い組み合わせっぽい。

「お疲れ他。」

じゃあ案内するから、といいかけて俺は固まった。
そういえばこいつら戦国時代から来たんだよな…。

「…どうした名前?」

首をかしげた元親が俺に声をかける。
つーか、名前呼びか。まぁ別に良いけど。

「………おまえら、そのままじゃ寝られねぇよな。」
「「「?」」」

俺の意図がつかめず首を傾げる戦国組。…あー、なんか可愛い。

「…こんな全員入れんの?」
「いや、でかいけど無理だろ。」

あぁ、他と先生は理解が早くて助かるぜ。

「3人ぐらいずつなら入れないこともないさ。」
「じゃあ俺準備してくる。」
「あぁ、頼む。」

他がリビングから出ていく。

「……あ、もしかしてお風呂?」

そこで佐助が気付いた。

「そう。着替えも一応貸すし。」
「うん…」
「?」

提案してみるが佐助の表情は強張る。
見れば、戦国組はみんな複雑そうな顔で俯いていた。
…そりゃ、前の世界では敵同士だったししかたないだろうが…。

「…敵同士だったし警戒が解けないのは分かる。だけど今は敵じゃないんだ。」

先生が視界の端で頷いてる。

「これから、元の時代に帰るまでとはいえ共同生活になるんだ。慣れてもらう以外ない。」
「……うん、わかってるよ。わかってるんだけど…」

やっぱりね、と続いた佐助の視線の先には片倉さんや元就の輪刀があった。
…確かに武器があったんじゃ落ち着かないよ。

「よし、じゃあ今から各自の武器を全部回収します。」

突然の俺の言葉に目を点にする面々。
そしてえぇぇっと己の武器へ触れる。

「警戒する要素が無くなれば良いんだろ。」
「ちょっと待ってよ、そりゃ武器がなきゃ多少は違うけど…!」
「我が輪刀は渡さぬ。」
「…。」

小太郎も反対なのかぶんぶんと首を横に振っている。

「とにかく、武器は回収します。」

全員から非難の視線を受ながら俺はそう言い切った。

「…お前ら、居候の身だってこと忘れてねぇか?」

無言の抵抗で静まり返っていたリビングに先生の不機嫌そうな声が響いた。

「家主が言ってんだ。従うべきだろ。」
「…先生、」
「だって我が儘じゃねぇか。」

あまりな言い方に眉を寄せるが先生は相変わらず不機嫌そうに佐助たちを睨んでいる。

「あと10分くらいで入れるよ。」

そこへ他がのほほんと戻ってきた。そして嫌な雰囲気に首を傾げる。

「…警戒を解くのに武器を全部回収するって話。」

俺は簡潔にこの状況を説明した。

「だけどこいつら拒むんだぜ。」

「違っ、俺様たちは…」

冷たい先生の視線に佐助が俯く。
ふぅん、と曖昧な相槌を打って他は俺の隣へ並ぶ。

「…大変だね名前。」
「…まぁな。」
「でもさ、」

そしてさも当たり前のように刀を示して

「これって完璧に銃刀法違反だよね。」

そう言った。
………あぁ、そういわれてみればそうだった!

「…気付かなかったぜ…。」

うなだれる先生。うん、俺も同感だ。

「…ねぇ、そのじゅうとう何たらってなに?」
「拳銃や刀を許可無しに持っちゃいけませんよって言う決まり。」
「…そんなんあるの?」
「あるよ。ちなみに決まりを破ると警察に捕まる。」

驚く佐助たち。まぁ戦国時代にそんな決まりはないだろうからなぁ。

「けいさつって、俺たちが来たとき話してた…」
「そ、悪いことをした奴や規則違反を捕まえる人たち。」
「某達、決して悪さなどしておりませぬ!」

他の言葉に憤慨する幸村。

「してるよ悪いこと。不法侵入は立派な犯罪。ついでに銃刀法違反ね。」
「ふ、ふほぅっ?!」
「他人の家や敷地に勝手に入ること!」

よく分かっていない幸村に先生がきれかける。
大人げないな。

「そ、それは仕方なくでござる!」
「分かってるよ、だから名前がてめぇらの話聞いてやるって言ったんだろうが!」

うぐっと言葉につまった幸村たちに、先生は追い討ちをかけた。

「ったく、我が儘言ってないでさっさと武器渡せ。」
「うぅ…」

みんな武器を持ってちゃいけないとは理解してくれたらしい。
しかしやはり武器を手放すのは抵抗があるのかまだ渋っている。

「いい加減にしろよ。今出さなきゃこの家から叩き出す。」
「…おい先生」

キレかけている先生を宥めようとしてみるが無駄っぽい。

「そんな分かりやすいもん持ってたらすぐに警察に捕まるぜ。住所不定無職、その上戸籍もないんだから下手すりゃ不法入国になるかもな。そうなりゃ即行ブタ箱行きだ。」

つらつらと言葉を並べる先生。だがきっと彼らは半分も理解できていないだろう。

「ブタ箱…?」
「あ?簡単に言や牢屋だよ。」
「そ、そんな…」

がっくりと項垂れる幸村が余りにも憐れそうで俺はため息をつく。

「先生脅しすぎ。」

他も同じように思ったのかそう言って苦笑した。

「手入れもあるだろうから刀を取り上げて返さない訳じゃない。ただお互いに慣れるまで預かるだけだ。」

じっと7人を見つめていると、決心したのか慶次が刀を下ろした。

「業に入らば業に従え。名前が言うなら従うよ。」
「慶次…」

あ、なんかじんと来たかも。
自分でも微笑んでるのが分かる。

「ありがとな。」
「っ!い、いや俺こそっ…!」

慶次が照れたように笑う。
可愛いな。

「!某もお預けしまする!」
「だ、旦那?!」
「幸村…ありがとう。」

言いながら幸村が寄ってきたので頭を撫でてやると振りきれんばかりの尻尾と嬉しそうに動く犬耳が見えた。
…あれ、幻覚?

「…分かったよ。」
「……仕方ねぇ。」

それから佐助や片倉さんも刀を置いた。…佐助の服から大量に武器が出てきたのにはマジで驚いた。

「ありがとう、これで全部だな。」

やっと集まったみんなの武器。
あまりの多さに若干引いた。

「どこ置くんだ?」
「物置かなぁ。」
「入るのか?」
「なんとかして。」

俺の理不尽な物言いにはいはいと肩をすくめた先生はがちゃりと音をたてて集められた武器を抱える。

「怪我しないで下さいよ。」
「こんなときだけ敬語か。」

不満そうに言いながらリビングから出ていく先生。
あとは先生に任せれば大丈夫だろう。

「じゃあ風呂入ろうか。」

ちょうど風呂もおとし終わったみたいだ。
他と一緒にタオルと着替えをとりにいく。
もちろん、動き回るなとみんなに釘を刺して。


…これから、ものすごく大変な入浴タイムが始まる。





 


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