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名前が出かけ、リビングに残されたアキと他はただただため息をつくばかりだった。
びしっと床に正座する幸村に倣い、元親、慶次、小太郎と並んで座っている。
はたから見ると異様な光景なのだが、残念ながらここにはそれを指摘してくれる名前も佐助も元就もいない。
「…てーか、どう説明しろってんだ名前…。」
「と、とりあえず日用家電から…。」
壊されると困るし、と続いた他の言葉に、アキはまず一番近くにあったテレビを指さした。
「これからいろいろ説明していく。しっかり聞いて覚えとけよ。」
こくこくと頷く4人。
「まず、これはテレビだ。で、これがリモコン。」
アキはピッとテレビをつける。
「な、なんとっっ!?」
ちょうどニュースの時間で美人アナウンサーが映った。
「人が箱の中に!?」
「な、なんだこれ…!」
「なにか話してるぞ!?」
わっと騒ぎだす4人にアキと他は苦笑した。
「別に中に人は入ってないぞ。仕組みは…説明しても分からんだろ。」
「俺は知りてぇ!」
意気込む元親をそのうちな、とあしらって2は部屋中の家電品の名前と性能と使い方を教えていった。
1つ1つ説明するたびに4人が驚くので2人は面白がって説明した。
「…す、すげぇんだなぁ…。」
「某、感服でごさる…。」
「いろいろと便利だねぇ。」
やっと説明が終わり落ち着いた6人。
4人が特に感心したのは電話だった。やはり遠くにいる相手と会話が交わせることに驚いたらしい。
「あ、車の音。」
そうこうしているうちに名前が帰ってきたようだ。
それに気付き風魔が玄関へと向かった。
「ただいまー。」
玄関から名前の声が聞こえてくる。
「おかえりー。」
それに返事を返して待っていると名前から半分袋を受け取った風魔と3人が入ってくる。キッチンに袋を置いた名前は笑顔で、手伝った元就と佐助の頭を良い子良い子と撫でた。
子供扱いに少し照れたように抵抗する2人。
それを見ていた風魔は自分も兜を外し名前の前に立つ。
名前はそんな風魔に、笑いながら頭を撫でてやった。
「いいなぁ。名前〜俺も〜」
ふらっとやって来た他の頭をはいはいと撫でた名前はそのままキッチンに立った。
「夕飯なに?」
泊まる気満々のアキに名前は肩をすくめて見せた。
「ごった煮可能な炭水化物。」
「………あー、うどんね。」
「名前、手伝おうか?」
「ん、じゃあこれ切ってくれる?」
「はーい。」
素直に返事をした他が名前の隣に立ち包丁を握る。
でかい鍋をコンロにかけながら、名前はじっと自分たちを見ている佐助と元就にアキの所へ行くよう示した。
「先生、その二人にも説明よろしく。」
…お〜。と聞こえた返事に名前はコンロの火をつける。
佐助と元就は台所を後にし、素直にアキの所へ行ったのだった。
「入るよ。」
夕飯を他たち8人に出した名前は、2人分の夕飯を持って客間に来た。
「………名字…」
「様子はどうです?」
「あぁ、静かに眠っておられる…。」
安堵しているような表情の小十郎に名前はそうですか。と返してお盆を置いた。
「夕飯です。」
「……悪いな。」
湯気と共に鼻腔をくすぐる汁の匂いに小十郎は己の腹が空腹を訴えていることに気付いた。
「いただきます。」
「…いただきます。」
行儀良く両手を合わせてから食べ始めた名前に、ここで食べるのかと少々困惑しながら小十郎もそれに倣って食べ始めた。
しばらくは二人のうどんをすする音だけが聞こえていた。
「…………悪かった、な。」
「?はい?」
そんな中ぽつりと響く謝罪の声。
名前がなんのことかと聞き返せば、ばつが悪そうに小十郎は呟く。
「…刀を向けたことだ。」
「あぁ。」
「正宗様を助けていただき、その上飯と寝床まで…」
「困った時はお互い様ってね。気にしなくていいですよ。」
にこりと綺麗な笑みを浮かべ、名前はまたうどんを食べ始める。
「…あぁ、……ありがとう。」
言い慣れない言葉のせいかはたまた名前の笑顔のせいか。
小十郎は頬が紅くなるのを自覚しながらまた箸を進めるのだった。
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