長編 | ナノ





「…勝手な人ですね。」

今日からまた実習がある。もう他の奴は出発したが忘れ物を取りに来た俺は、俺と名前の部屋の前で泣いている立花先輩を見つけた。

「…久々知…」

涙に濡れた先輩の顔。
名前が綺麗だと何度も繰り返したその人が、ひどく憎く思える。
だって、この人は名前を泣かせた一人なのだから。

「…名前は…」
「いません。貴方には会わせません。」
「っ!」

名前を無視してあんな女と笑ってたくせに。
あんなに名前を傷つけたくせに。




あんたも、名前と同じ思いをすればいいんだ。












数日の実習の後、戻った学園で見かけた先輩はとても辛そうでした。
あの天女がいなくなって悲しいのですか。
私では癒すことは出来ませんか。
そんな事、もう言える立場ではないのに、貴方の事ばかり考えます。

「…兵助、」

兵助はずっと先輩に怒っています。
しばらく立花先輩には近づかない方がいい。と実習の最初の日に言われました。
その意図は分からないけれど、やはり私はあの人が好きです。
だから、何をしても先輩に笑ってほしいのです。

「…会いに行ってこい。」
「兵助?」
「先輩に会いに行ってこい。…もう、いいだろ。」

何がいいのかは分からないけれど、私は走り出しました。
先輩はもう部屋に戻ったでしょうか。


愛しい人。




私は、貴方しか見えないのです。









 


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