長編 | ナノ





名前が泣いている。
涙も声も出さずに。笑顔の裏で、心のうちで、ずっと泣いている。
どうして、あんたはそこで笑っているんですか。
その女は名前を泣かせているのに。
いや、名前を泣かせているのはあんたですか?

「名前、お前このままでいいのか?あの人のこと…」
「好きだよ。多分これからもずっと。」

名前はいつも笑っているのに、あんたは気付かないんですか。

「先輩が幸せなら私はそれでいいんだ。」

そう言って哀しげに笑う名前が、どんなにあんたを想っているか、知らない訳じゃないでしょうに。





後輩が泣きついてきた。あの女に告白したんだそうだ。
あぁなんて哀れな子。
泣きながら、「あの人はみんなが好きだから、誰か一人を好きにはならないんです。」と呟く。
「でもあの人を嫌いにはなれないんです。」と。
俺はただ静かに後輩の背を撫でていた。

そうか、あの女はそんなことを言っているのか。


一人を好きにはならない?
みんなが好き?


その程度の気持ちで、名前から大切な人を奪ったのか。

(…赦せない、よなぁ。)

俺は忍たま。実習で積んだ経験と、五年間学んだ知識は豆腐に限らず豊富である。

綿密に計画を練り上げながら俺は笑う。
誰にも見られてはいけない。誰にも知られてはいけない。




彼女には、さっさと還っていただこう。









 


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