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あの雨の後、先生方と上級生を集めて会議がひらかれた。
議題はもちろん、男に存在を知られた件について。
「………わしらの掟では、」
重々しい空気の中、学園長先生が口を開いた。
「人間に姿を見られたら、その家から去らねばならない。」
何人かが、息をのんだ。
ずっと暮らしてきた家だ。何代も何代も前から借り暮らししてきた、大切な家。それを捨てると言うのだから、ショックを受けない方がおかしい。
「…本当に申し訳ありません。」
「仙蔵、」
「私達がついていながら…」
「よいよい。みなが無事で何よりじゃった。」
深く頭を下げる仙蔵と長次に、学園長はそう言って微笑んだ。
「学園長、移住の件はどうしますか?」
「子供たちもまだ幼い。遠出は危険じゃ。」
また思案顔に戻った学園長。
「今すぐここを出るということはせん。明日から先生方は移住先探しを頼む。移住先が決まるまでは様子を見るとしよう。」
上級生には後輩達の世話を頼む。
そうくくり、学園長は会議を終わらせた。
「仙蔵、あまり気に病むな。」
「文次郎…だが私達は、」
「不可抗力だ。ありゃどうにも出来なかったことだ。」
「そうだよ。それに助けてくれたんだろう?案外良い人なのかもね。」
「だけど人間に姿を…」
「うだうだ悩むな!もう済んだことだろう!」
「そうだ。今俺たちがやるべき事は後輩たちを危険な目に遭わせないようにすることだ。」
「…すまない。」
文次郎の言葉に仙蔵と長次はわずかに表情を緩めた。
その後、上級生が後輩達の面倒を、先生が交代で男を監視すると言うことで話はまとまった。
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