7
きゅうに雨が降ってきた。
季節外れの夕立。
縁側で仕事していた俺は慌てて廊下のガラス戸を閉める。雨はまるでバケツをひっくり返したようで、瞬く間に廊下は水浸しになってしまう。
「うわ、すげぇ雨!」
慌てて戸を閉めるが雨には適わない。奥の座敷はもうびしょびしょだった。
見れば手入れをした裏庭は水没仕掛けていた。地面の凹凸のせいで小さな川のように水が流れている。
「やばいなぁ、庭に川ができてらぁ。」
思わず独り言をつぶやく。
「「わーっ、立花せんぱーい!」」
その時、俺の声にかぶるようにそんな声が聞こえた。
…子供の声、か?
おかしいと思いながらじっと目を凝らす。雨のせいで視界は悪いが…………
「……あれ。」
見つけた。
小さな子供二人が背の高い草の茎に抱きついているのが見えた。
どうやら庭の川のせいで家に戻れなくなってしまったらしい。
近くにあったサンダルをつっかけ二人の所に走る。
とりあえず二人が落ちないように草に手を添えた。
「せ、せんぱっ」
「助けて〜!」
わーっ!と泣き叫ぶ二人を怖がらせないよう、出来るだけ優しく声をかける。
「大丈夫、何もしないよ。」
「…………………ほぇ…?」
「家まで運ぶよ。乗って?」
雨に濡れないよう二人を庇いながら笑いかけると、そんな声を出して顔を見合わせた二人はおずおずと俺の手の上に座り込んだ。
「ん、大人しくしててね。」
2人が落ちないように丁寧に、けれど早足に家に戻る。よく見ると、縁側の下にやはり小さな2人が隠れていた。
俺が近づくと2人は俺を睨み付けながら支柱の陰に隠れる。
「はい、もう大丈夫だから。」
その2人の近くにそっと手を下ろすと、手のひらの2人は泣きながら駆けていった。
「しんべヱ!喜三太!」
「「せんぱぁい!!」」
4人が無事床下へ消えていくのを見届けて、家に戻った俺は濡れて気持ち悪い服を豪快に脱ぎ捨てた。
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