長編 | ナノ


5


男はどうやらこの家に住むらしかった。
ずっと開けられていなかった雨戸を開け、慌ただしく大掃除を始めた男。
一番奥の部屋に生活の拠点を構えていた俺たちは慌てて後輩たちを床下へと誘導する。

「急げ、気づかれるなよ!」

わらわらと後輩達が床の穴へ飛び込む。

「留三郎。」
「文次郎!男の様子は?」
「茶の間と台所の掃除を始めた。まだこちらには来なそうだ。」
「そうか。」

なら好都合だ。今のうちに全員 避難できる。
そう思って文次郎を見ると複雑そうな表情だった。

「どうした?」
「…いや、普通なら雨戸全部開けてから掃除するだろうと思ってな。」

そう言って廊下に目を向ける文次郎。確かにまだこの部屋の近くの雨戸は開けられていない。

「そういう変な奴なんだろ。とにかく今は隠れるのが先だ。」
「…そうだな、すまん。」

半年もの間人が居なかったから堂々と生活しすぎた。布団やら机やらを運びながら、俺たちはあの男がこの部屋に来ないことを願った。


 


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