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大学を卒業して半年。
仕事も軌道に乗り自宅でこなせるようになったから、俺はじいちゃんの家に帰ることに決めた。
周りの奴はみんな反対していたけど(じいちゃん家は完全に森の中だから)、小さい頃からずっとあそこが俺の家なんだ。
じいちゃん家は小さな森の中にあって多分半年手入れしていない延び放題な草で車は庭まで入れない。
林の中を切り開いた車道(これも草だらけだった)をかき分けて進む。とりあえず、草刈りから始めないとかな。
「うっわ〜、やっぱり草だらけだ。」
じいちゃん家の庭は予想以上に草に覆われてきた。俺の腰くらいまである草をかき分けて玄関を目指す。
辛うじて姿を見せていた玄関前の石畳。草の少ないそこに立ち、古風な家を見上げる。
一階建ての平屋。
じいちゃんとばあちゃんと三人の時は少し狭く感じた。ばあちゃんが亡くなってじいちゃんと2人になった時は少し広くなった家が寂しかった。
そして今。
ひとりの俺にこの家は広すぎる。
立て付けの悪い玄関の戸を開ける。誰も住んでいないはずなのに、中の空気はそんなに淀んではいなかった。
それが家の作りのせいなのか周りの自然のせいなのか、はたまた別の理由からか。
それは俺には判らない。
「……じいちゃん、ばあちゃん」
だけどそこが
「ただいま。」
俺の帰るべき家なのは、確かだった。
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