長編 | ナノ


2


「さて、話を聞こうか。」

とりあえず怪我していた奴の服を綺麗な物に着せ変えて客間にひいた布団に寝かせたあと、その側を離れようとしないヤクザな男に仕方なく俺達は客間に移動した。

全員を布団の前に一列に座らせその正面に他、俺、アキ先生と座る。

「じゃあとりあえず名乗って、なんでここにいたのか話して。」

家に帰ったらいたこいつら。

いろいろと面倒だったがやっと落ち着いて話が出来る。

「某は甲斐の国、武田信玄に仕える真田幸村と申す!」

「…俺様は猿飛佐助。真田の旦那に雇われた忍だよ。」

「俺は前田慶次。こっちは夢吉さ!」

そう言うと前田の懐から小さな猿が出てきた。…あ、可愛いww

「俺は長曽我部元親だ。ほら毛利、」

「………毛利元就だ。」

銀髪の長曽我部に促され不服そうに小柄な毛利が名乗った。…うん、美人さんだなぁ。

「風魔は?苗字?名前?」

「苗字だよ。名前は小太郎。」

他の問いかけに風魔のかわりに佐助が答える。

「あぁ、風魔の旦那は口がきけないから。」

俺の視線に気付いたのか佐助はそう言う。

風魔を見るとこくんと頷いた。

「じゃあそっちは?」

寝ている男とその側にいる男に聞く。

「この方は伊達政宗様だ。俺は片倉小十郎。政宗様にお仕えしている。」

とりあえずみんな名前を聞いて顔を覚える。…それにしてもこいつら…

「…貴様は名乗らぬのか。」

「え?あぁ、そうか。」

考え込みそうになった俺に毛利が不機嫌そうな声をかけてきた。

「俺は名字名前。この家の主だ。で、こっちは…」

「友人他です。」

「高槻晶人だ。医者をしている。」

それだけ言って黙ってしまう二人。

横顔を見るとどちらもさっきの俺と同じことを考えているんだろう。

「…名前、俺思うんだけど…」

「あぁ。非現実的過ぎるけどな。」

「でも目の前にいるんだ、認めないわけには行かないだろ。」

思わず三人でため息をつく。

「…なんなの?」

そんな俺たちに猿飛たちは首をかしげるばかりだった。

「いいか、落ち着いて聞けよ。」

俺の言葉にみんな息を飲む。

「…ここはあんたたちのいた世界じゃない。もっとずっと未来の世界だ。」

一瞬、並んだ8人は動きを止めた。

そして何を言っているんだと言うように俺を見る。

「嘘じゃない。…あんたたちだって薄々気付いてはいるんだろう?」

何人から俯くように視線をそらす。…それは何よりの肯定だ。

「何が原因かは分からないがあんたたちは時空を越えてこの世界に来てしまったんだ。」

戦国時代からの来訪者。まったく夢のような話だ。

「ここはあんたたちのいた時代からだいたい500年後くらいだ。」

「…なんで名前分かるの?」

他の不思議そうな声に思わずため息。

「…伊達政宗や真田幸村といえば戦国時代だ。まぁ、俺たちの知ってる歴史とは少し違いがあるようだがな。」

「しっかりしろよ大学生。」

反対側のアキ先生が笑うと他は気まずそうに目をそらした。まぁ、他の専攻は日本史じゃねぇからな。

「…佐助、今の話、どういう事だ?」

「…旦那…」

真田が首をかしげながら隣の猿飛に聞いている。

…あれ、俺の説明分かりずらかった?

「つまりね、ここはずっとずっと未来の世界だってこと。」

佐助のフォローにも首をかしげていたが自己完結できたのか静かになった。

「なぁ、俺たちが未来の世界に来たってのはわかった。」

今度は長曽我部から俺たちへの問いかけ。

「じゃあ俺達はどうやったら元の世界に戻れるんだ?」

それは全員の疑問だったらしい。座っている全員が俺を見る。

「…分からない。」

「この世界にゃいろいろ変なからくりがあるじゃねぇか。それで…」

「無理だ。時間を越えられるような発明、あったらノーベル賞ものだぜ。」

アキ先生のため息混じりの返答に長曽我部は肩を落とした。

いや、長曽我部だけじゃない。みんな元の世界に帰りたいんだろう。

「…とりあえず、この世界に来る前、何をしていたか教えてくれ。」

なにか時空を越える手がかりがあるかもしれない。

「某は鍛練の最中でござった。そこへ佐助が来て…」

「俺様は旦那を呼びに行くところだったんだ。でも呼ぼうとしたら突然目の前が真っ暗になって…」

気が付いたらさっきの部屋だった。そう締め括られた佐助の話。

「……風魔も?」

「…………(コクコク)」

佐助の話が終わるのに合わせて風魔が手を上げた。自分も、と言うことらしい。

「俺も似たようなもんだよ。まつねぇちゃんから逃げてて、目の前が真っ暗になったと思ったらこの世界さ。」

「俺は縁側で昼寝してたんだ。で、起きて部屋に戻ろうと思ったら真っ暗になってあの部屋だった。」

「…我は進軍の準備をしていた。だがその筈が気が付けばここだった。」

「視界が暗くは?」

「なったぞ。」

「最後、片倉さんは?」

「…俺は戦だった。政宗様へ追い付いたと思ったら暗くなって…」

「……この世界、と。」

なるほど、なにをしていたかはばらばらだが視界が暗くなるのは共通しているのか。

「…大した手がかりはないな。」

「視界が暗くなるなんざ、瞬きしてりゃあ当然だ。」

「身も蓋もない言い方するなよ先生。」

3人でまたため息。

それにつられてかトリップ組もため息をつく。

「…まぁ向こうにはいつか帰れるとして」

「うん、これからどうするかだよねぇ。」

前田と猿飛。

「某、未来の話が聞きたいでござる!」

「俺もだ。ついでにカラクリの事も知りてぇな。」

「ふん、機械馬鹿め。」

真田と長曽我部と毛利。

…戦国武将とか言うけど、わりと仲良いんじゃん?

「…猿飛、」

「?なに、名字…さん?」

「聞くまでもないけど、こっちで頼れる所なんてないよな?」

「…ないよ。だからみんな困ってるんでしょ。」

「…おい名前、何考えてる。」

口を尖らせる猿飛と、睨む先生。

なにを考えているかバレたらしい。

「先生が考えてる通りさ。」

「駄目だ名前!俺は反対!」

がぁっと吠える先生にみんな驚いていた。

「ここまで来て放り出すわけには行かないでしょう。」

「だからってなぁ…」

「…もう決めましたから。」

「おい名前…」

なおも食い下がる先生にある一言を。

「それ以上言ったらもう口ききませんから。」

「うっ!」

効果覿面。先生は渋い顔して黙り込んだ。

「他、いいな?」

「もちろん。ここは名前の家だしね。」

頷く他を見て、真田たちの方へ向き直る。

「元の世界に戻るまでここに居ればいい。」

じっと俺を見ていた7人は俺の言葉に間抜けな顔をした。

「部屋も余ってるし金銭面の余裕もある。」

それに伊達を動かせないだろ、と続ければ最初に動いたのは片倉だった。

「ここを出されたら政宗様が危ねぇ。すまねぇがよろしく頼む。」

畳に額が付くくらい丁寧にお辞儀してくれた。

「某もよろしくお頼み申す!ほらお主もだ、佐助。」

「…うん、よろしく、お願いします…。」

3人に続きみんな頷いたり頭を下げたり。

うん、とりあえず話はまとまった。

部屋割りとかいろいろ面倒だけど、なんだか楽しみだ。



こうして、俺たちの合同生活が始まった。







 


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