長編 | ナノ


3


翌日、灯りになりそうなものを探していた文次郎たち。

「潮江先輩」
「三木ヱ門、どうした?」
「左門がいません。」
「…またか。」

ため息をつきつつ、近くで日向ぼっこをしていた作兵衛と藤内に左門の捜索を頼み、また灯り替わりを探す。
途中、籠を編んでいる留三郎と喧嘩をして食料調達に行っていた仙蔵に怒られる。
平和な、いつも通りの日常だった。
しかし…

「おい大変だ!!」

普段家の周りの林をパトロールしている小平太が林から飛び出してきた。

「左門!」
「あ、先輩やっと見つけた!」

小平太に引きずられてきたらしい左門は、もう迷子にならないよう作兵衛と藤内によって縄につながれた。

「何かあったのか?」

小平太のただならぬ様子に、近くにいた小人たちが集まってくる。

「大変だ!人が来る!!」
「人間が?」
「っ、まさか家を壊す気じゃぁ…!?」
「落ち着いて留三郎。」

ざわざわと留三郎の言葉に動揺する後輩たちを宥める伊作。
腕組みした仙蔵は、じっと庭の入り口を見つめている。

「…とにかく、今は家に戻ろう。」
「あぁ、車の音はしない。少なくともすぐに取り壊されることはないはずだ。」
「みんな、急いで家に戻れ!」
「「「「はいっ!!」」」」

文次郎の指示に、後輩達が走り出す。
自分たちの背丈の何倍もある草を飛んだり跳ねたりしながらみんな家に向かい駆ける。その最後尾についた上級生たちが床下へと潜り込んだとき、青年が林を抜けて庭へと姿を現した。

「…あれか?」
「そうだ。」
「…ずいぶん優男だな。」

こっそり雨戸の隙間から青年を覗き見た文次郎と小平太と仙蔵はそんなことを口々に言い合った。
青年は腰近くまで伸びた草をかき分けながら玄関へ向かってくる。
無造作な黒髪が日差しの中でキラキラ揺れた。

「……この家に何のようだ?」
「分からん。だが、見たことがあるような気が……」
「なんだ知り合いか?」
「…いや、多分気のせいだろう。」

青年は玄関の手前の石畳に立つと、ゆっくり家を見上げた。
文次郎たちは慌てて陰に身を潜める。

(…気付かれたか?)
(…いや、大丈夫そうだ。)

青年は家を見渡して小さくほほえむと、玄関の戸へ手をかけた。







 


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