金髪くんはかかとを踏み潰したスニーカーをペタペタ言わせながら亀並みのゆっくりとしたスピードで現れた

その肩にはラケットバッグがひっかけられていた…、あれ、もしやテニス部?

しかしもうテニス部の練習は始まっているようだし…今でも遠くでパコパコと打ち合う音が聞こえるもんな


「お待たせぇ〜」

「や、ほんとに待たせんなよwww どんだけ歩くの遅いんだwww」

「これでも急いで来たんだけどなぁ〜?」

「テニス少年やい、部活に行かんでええんか?」

「あれっ?なんで俺がテニス部だって知ってんの〜?」

「いやだってそのバッグ見たら分かるべ」


金髪くんは手の甲でゴシゴシとまぶたを擦り大あくびをかました
どう見ても寝起きなんだがwww

さては教室でうたた寝してて行きそびれたんやろ?
ぜんざい風にいうと"自分ほんまアホっすわ"って感じだ
余談だが俺の似非関西弁はぜんざいの物をマネしている…リスペクトであって悪意はないんだぞ?

俺の脳内で勝手にうたた寝説を立てられ散々貶されているとも知らず、金髪少年はヘラリと笑った


「あっ、そっかぁ… 部活はね、いいの
それより、今から俺とテニスしよう? 俺、ずっとテニスしたかったんだよねぇ〜」


「ぶwwかwwwつww行wwwけwwwwww」

「あぁ〜、そうなっちゃうよねぇ〜
説明、めんどいなぁ…」

「おん?なんや訳有りなら言うてみ? テニス、したいんだろ〜?」

「ん〜、面倒〜 とりあえず寒いし、移動しよっか」


おいでおいでと手招きをされるがまま、俺は氷帝学園の校舎内へと足を踏み入れた
校内はだだっ広いしやけに輝いていた…ふつくしいな

俺が行ってた所とは大違いだなぁとまるで探検中のような心境でニヤついてたら金髪少年に手を握られた

えっ…、なんで手繋ぐの?
ギョッとした顔をしつつ少年を見るとにっこりと笑顔を返された

訳分からん、だれかここに通訳を呼んでくれ

まぁ、手を繋がれる位、問題はないかとそのままにしておいた

しかしこいつやっぱり歩くのおっせぇ…むしろそっちの方がイライラしてきた位だ
しかし土地勘もないし自分が先陣を切ることも叶わず深いため息をついた


「なぁー、歩きながらでも話せないの? その訳ってやつをさぁ」

「え〜? まぁ、いっかぁ…話すね」


金髪少年は再度へらりと笑って口を開いた

要約すると、氷帝学園に転入生がきた(無論俺ではない)
その転入生にはなにやら不思議な魅力があるらしく、一躍氷帝のマドンナの座に踊り出た後、テニス部のマネージャーとなった

彼女の魅力はテニス部レギュラー陣をも虜にし、レギュラー達は少女を喜ばせるための"魅せる"プレイばかりを行うようになった
金髪少年に彼女の魅力はさっぱり判らず、テニスらしからぬプレイばかりを行うテニス部に嫌気がさしてしまったのだそうだ

それ故に、転入生に毒されていない部外者である俺とテニスがしたかったのだろう


「なんつーか…、その転入生に会ってみたいよな
どんだけの顔なのよwww」

「その子が可愛いんじゃなくてぇ〜
んー…、みんなの好みが変わっちゃう感じ?」

「さっぱりわからんwww そんな美人じゃないって事?」

「…俺はぁ、好きじゃない顔かな?」

「お前さんの好みは知らんがな」


未だに繋がれたままの手をぶらぶらと揺らしながら答えると金髪少年は不満そうにむくれてみせた
よーわからん
ほんまよーわからん


「あぁー、話すことも話ちゃったしなぁ…
俺とテニスしてくれる〜?」

「いいよ ただ暗くなったら帰り道がわからなくなるから一球勝負ね」

「君が弱かったら試合しても面白くないC〜
それでいいよ〜」

「くっそ泣かす」


金髪少年はクルリと来た道を引き返しだした
ま、まさか…


コート一面貸してねぇー?と、金髪少年は我が物顔で平部員達の練習風景の中に割って入った
平部員達は盛大に驚きながらもあっさりとコートを譲っていた

ちょいちょいwww
こいつどんだけ影響力あるんだよwww


「ジャージとか持ってないよねぇ?」

「おう」

「じゃあ俺も着替えないでいいや〜」


ブレザーを脱いでネクタイを引き抜き、ワイシャツのボタンを二つほど外す姿を横目に見ながら俺もパーカーを脱いでベンチに放った
胸元がやや開いた長ティーを着ていたんだった
恥ずかしい…、鎖骨丸見え…まぁいいか、サービスサービスゥ!

そんな事より前髪とメガネがマジうざったいけど、そのままでいいかなぁ
学園生活ではこのフォームで過ごすんだし、しゃーない

手提げバッグから愛用のラケットを引っ張り出してのんびりコートに入った





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