04


 今日だけで、何回抱いただろう。
 万事屋ではからかってウサギ耳で弄る程度だったが。
 会うと止まらなくなるから厄介だ。
 艦に来て、昼食を食べてからすぐに銀時を自室で抱いた。
 途中で来島が俺を探しに来た時は見ものだったなァ。
 扉一枚隔てた向こうに人がいる、それだけで銀時は敏感になって中に挿れた俺自身を強く締め付けやがった。
 我慢できなくて律動を再開し、腰を打ちつければ、銀時は必死に自分の両手で口元を押さえて喘ぎ声を殺そうとしていた。
 くぐもる声。赤い瞳に浮かべた涙。
 そんな痴態を見せられて、興奮しない男がいるか?
 口を塞ぐ手を除けて、唇で塞ぐと、舌で歯列をなぞり逃げる銀時の舌を絡ませて蹂躙する。

「ん、……んんっ」
「気持ちイイか……?てめーはココが良いンだろ?」

 銀時の中のある一点を突いてやると、鈴口から勢いよく白濁が、唇からは押さえきれない嬌声が唾液とともに零れていた。
 絶頂の余韻を、銀時は小刻みに震えて快感を享受する。
 鈴口から溢れる蜜を腹に塗りたくり、残りを頬に擦りつけて、

「……まだだ。俺はまだイってねェぜ?」
「あっ、たか……す…、や…らぁ」

 快楽に熟れて泣きだした銀時の耳元で囁く。
 久々に抱いてやってるんだ。
 てめーも楽しめよ?

「やっ、また…イく…っ…」
「何度でもイけよ、銀時。お前も、こんなんじゃ物足り無ェだろ?」
「あ、あ、あ……ぁんっ…」

 銀時の良いところを突きながら、俺は中に熱を吐き出した。
 いつの間にか、扉の向こうにあった来島の気配がなくなっている。きっと気付かれてはいないし、聞かれてはいまい。
 銀時の嬌声を聞くのは、俺一人だけでいい。
 その後も嫌がる銀時を風呂で抱いて。
 のぼせてしまったので熱を冷ましてやって。
 くだらない話をして。
 銀時が楽しそうに笑うのを見ながら夕食を食べた。
 煮物は味が染みていて昼より美味しい。
 ──いや。銀時の手作りで、しかも目の前に本人がいるから美味しいンだろうな。……なんて、柄にもないことを考えた。
 銀時がいると、いつもの酒も美味しく感じる。
 やっぱり、てめーは特別だ。
 食事が終わると、見計ったかのように武市が部屋に入ってきた。

「壊れたウサギのしっぽ、新しく買ってきましたよ」

 銀時をからかって遊んだウサギのしっぽ。実は、床に投げつけられた際に破損して使いたくても使えなかったのだ。
 艦に戻ってすぐに武市に頼んだ甲斐がある。

「悪ィな」
「お前っ、壊れてたのかよ!?」
「てめーが床に叩きつけるからなァ。新しいしっぽ、俺が着けてやるぜ?」
「──お断りしますぅぅうぅぅ!!!」
「遠慮するな」

 逃げる銀時を捕まえて。
 万事屋で着けさせたウサギの耳、手袋、首輪と買って来させたウサギのしっぽを着けさせて一通り見て楽しんだ後にまた抱いた。

「このっ、変態!」
「俺が変態なら、てめーは淫乱だなァ?」
「触んじゃねーよ!エロ杉!!」

 腰が砕けて立てない銀時を風呂に連れて行こうとすれば、一緒に入るのは絶対に嫌だと言いやがる。
 仕方ないから、先に風呂行って大人しく部屋で待っていれば帰ってきやしない。
 どこかで歩けなくなったか。
 はたまた、誰かに見つかったか。
 昼間とは違くて艦内には他に人がいるってこと、忘れてたンじゃねェか?
 探しに行こうとした矢先、銀時が戻ってきた。

「ずいぶん遅かったじゃねェか。やっぱり俺が後始末すりゃ良かったンだ」
「うるせー。風呂でいろいろあったんだよ」
「…何があった」
「いろいろって言えばいろいろだよ。めんどくせーな、寂しかったのか?」

 高杉の額に触れるだけのキスをしながら。
 風呂で温まったらしい足を、無造作に布団に突っ込んでくる。
 まだ、髪が濡れてるじゃねェか。
 銀時が布団脇に放り投げたタオルでゴシゴシ拭いてやる。
 らしくない行動に、銀時は目を丸くして驚いていた。

「なんか、……こそばゆい。やめてください高杉さん」

 無視して拭き続ける。と、銀時はタオルを奪いお返しとばかりに力いっぱい高杉の髪を拭き始めた。
 ──…あァ。確かに擽ったいな。
 けど、心地良いのも確かで、身を任せて髪を拭かれた後、銀時はずれてしまった包帯を解いて丁寧に巻き直し始めた。

「なぁ、さっきの残った肉は持って帰っていい?」
「てめーのだ。構わねェが──銀時、その服…」
「あぁ?また子ちゃんが用意してくれた」

 銀時が羽織っていたのは、艶やかな色打掛だった。
 黒地に白と淡い薄紅色の桜が、胸元や袖口にあしらわれている。銀色の薄い生地が重ねてあり、派手ではないがとても華やかだ。
 しかも。
 色打掛の下に着ていたのは白無垢。
 純白の着物に帯、その下には薄っすら上気した白い肌と、自分が残した赤い痕が見える。
(来島も良い趣味してらァ)
 まるで花嫁衣装だと思いながら、高杉は何も言わずに色打掛を剥ぎ、着物の帯を解き貪るように唇を重ねた。

「おまっ、さっきまでヤってただろ!?」
「足りねェ」
「──もう、ムリだっ…んんッ」

 何度も挿れた後孔は緩んでいて、舐めた指を入れただけで簡単に高杉自身を受け入れた。
 中は熱く、溶けそうなほどトロトロで。
 無理やり腰を動かし焦らすように浅いところばかり突いてやれば、もっと強い快感を求めて勝手に銀時の腰は揺れ出す。
 結合部からぐちゃぐちゃ水音が聞こえて、放っておかれた前方に愛撫を加えれば震えながら絶頂に達する。

「あぁ…ん、んっ」
「銀時ィ。色打掛って知ってるかァ?」
「んんっ…あ、い…ろ…?──んっ」

 朦朧としている銀時の耳たぶを噛み、意識を戻させる。

「結婚式で新婦は白無垢を着る。ンで、お色直しとして色打掛を羽織ると──あなた色に染まりましたって意味なンだぜ?」
「なっ……あ、や…ぁ」

 染めてやるよ。
 俺色に、何度でも。
 抱けば抱くほど、感度が上がっているのがわかる。
 胸元にはたくさん赤い痕が残っていたが、消えないように、また同じ場所に舌を這わせて赤く染める。
 胸に膨らむ飾りを見つけて、指で弄りながら舌で噛む。

「お前はどこも甘いな?」

 乳首の刺激で再び絶頂に達した銀時の中に深く突き入れれば、強い締め付けで高杉も同時に達する。
(……ヤりすぎたな)
 後悔はしていないが、嵌めを外し過ぎた自覚はある。
 銀時は意識を飛ばしたまま深く眠ってしまった。

 「──…帰したくない……かァ」

 首輪なんかじゃなく、鎖かなんかで手足を縛って。
 部屋に繋いで。
 閉じ込めて。
 誰にも見せないで、触れさせずに。
 このまま大人しく籠の鳥のように飼い殺せたらいいのに。
 そうすれば、俺はどれだけ楽だろう。
 何の心配もしない。
 何の気兼ねもしない。
 やきもちだって妬かない。
 俺のことだけ考えて、俺の為に死ねばいい。
 けど。
 そうしたら、銀時はどれだけ苦しむだろう。
 やっと見つけた居場所を捨てさせて、俺は何がしたいのだろう。
 先程脱がせた色打掛で銀時をくるむ。
 逃げださないよう大事に。
 誰にも見せないように。
 奪われないように、腕の中に強く抱き締めて眠る。

「今は、これで我慢してやらァ」

 もう一度。
 胸元に噛み付くようにキスをして痕を残す。
 ──忘れるな。
 てめーは俺のモノだ。
 今も。これからも。
 死んでも。……死んでからも。



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