01


 雪は嫌いだった。
 冷たくて、寒くて。
 触れると指先が凍てついて。
 悴んで……痛い。
 それは自分と同じ銀色を持ち。
 それは自分と似た孤独を愁い。
 ──自分が独りだと思い知らせる。
 けど、今は違う。
 隣りのこいつは不機嫌になるけど、雪は嫌いじゃない。


「銀時。窓閉めろ」
「ヤダ」

 はい。
 今日も今日とて。大雪が降って、隣りの高杉はとても不機嫌です。
 外を見ようとしません。
 火鉢から離れようとしません。
 俺と遊んでくれません。
 というか、高杉は本を読みながら器用に左手で俺の手を掴んで離してくれません。
 窓にへばりつくのも必死です。

「何度も言わせるな。閉めろ」
「なんで?」
「寒い」
「火鉢で暖とって何枚も厚い上着を着こんでるお前が?」
「あァ。寒い」
「あのさ、晋助。大体お前、なんでそんなに雪が嫌いなの?
 白くてきれいで美味しそうじゃねーか」
「銀時」
「…………」

 銀時はそれ以上何も言わずに窓を閉めた。
 言いたいことはたくさんある。
 部屋にずっと閉じ籠もるのは飽きたとか、なんで外に遊びに行ってはいけなんいだとか、挙げだしたらきりがない。
 だが、それを高杉は許さない。
 無言で銀時の手を掴んだまま微動だにしない。
(──ほんと、変なの。調子狂う)
 高杉は雪を見ると不機嫌になる。
 理由はよく解らない。
 ……まぁ、高杉自体がよく解らないけど。
 ほんと、解りやすいぐらい不機嫌になるんだよ。
 具体的に言うと、雪が降ると黙りこんで絶対に外に出ようとしない。
 それだけじゃない。
 俺が外に出ようとすると怒り出す。

 高杉には悪いけど、俺は雪が大好きだ。
 白いほわほわは、俺にとっては菓子を連想させるからだ。
 砂糖だってまっ白だし、綿菓子や金平糖にマシュマロ、生クリームに練乳だって若干の違いはあるが白い。
 それに、……温かくて甘い。
 あー、ちょっと違うか。
 温かくなって、甘くなるが正解か。
 高杉は、俺がどこにも行かないように手を掴んで絶対に離さない。
 とっても不機嫌だけど、雪が降ると俺の傍から離れないでずっと傍に居てくれる。
 そんな高杉も含めて、俺は雪が大好きなんだ。




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