魔法の冷蔵庫



『新米、入荷しました』

 見慣れない紙に、見慣れない言葉。
 新米。
 入ったばかりの新人のことだろう。新米刑事という言葉を聞いたことがある。
 入荷。どこからか入ってきたらしい。

「俺の許可なく、どこに入ってきたンだ」

 そのままの意味なのだが、料理はおろか買い物も行ってコンビニ程度の高杉には理解が出来ない。
 じーっと冷蔵庫に貼ってあるメモ紙を凝視していると、脇から伸びてきた銀時の手がそのメモ紙を取っていく。

「へぇ、今回のはどこの新米だろ。えっと、『この前の福井のコシヒカリの新米とっても美味しかったです。今週は肉じゃがと焼きそばを作る予定です』っと」
「……銀時」
「ん? なに、高杉」
「それは何だ」

 銀時はさらさらっとすぐに返事を書いて、メモ紙が貼ってあった冷蔵庫の同じ位置に返事を貼り付けている。

「いや、高杉って冷蔵庫の中身を補充したりしないじゃん?」
「しねェな」
「使うと元に戻ってる魔法の冷蔵庫のレイコさんは、作りたいものを書いておくとその食材が用意されてるんだ」
「魔法の冷蔵庫…」
「知らなかったの?」

 勝手に冷蔵庫の中身が補充されているのは知っていたが、銀時と冷蔵庫が文通をしているのは知らなかった。
 よく見れば、銀時が返事を書いたメモ紙の横に、魔法の冷蔵庫と今まで交換してきたメモが丁寧にファイリングされて置いてあった。

『もうすぐ醤油がなくなります』
『新しい醤油は流しの下です』
『ストック確認しました。ありがとうございます』
『何か足りない物はありますか』
『焼き菓子を作ろうと思っています。簡単で美味しい焼き菓子を教えてください』
『本を用意しました。作りたい、食べたい物があれば言ってください』
『全部食べたいです』
『甘い物が好きなんですね。焼きプリン入ってますのでどうぞ』
『ありがとう。ガトーショコラ作ってみたいかな?』
『ぜひ作ってください。ハーゲンダッツは晋助に見つかる前にどうぞ』
『ガトーショコラ作ってみました! ちょっと見た目悪いけど味は美味しいのでどうぞ!』
『ごちそうさま。とても美味しかったです』
『次はクッキーかな。イチゴ牛乳も仕入れていただけると嬉しいです』
『イチゴ牛乳お好きなんですか? 晋助は魚料理が好きです。作っていただけませんか』
『魚料理は苦手で焼くしかできないです。簡単なのを教えてください』
『ホイル焼きはどうですか』
『一緒に入れたキノコが嫌いだったみたいです。文句を言いながら全部食べてたけど』
『好き嫌いは気にしないでください。次は味噌煮とか照り焼きはどうですか』
『俺はカレーが食べたいです』
『カレーにしましょう。他に食べたい物があれば書いてください』
『お米がとっっても美味しかったです! 噛むほど甘く感じるというか』
『新米だからでしょうか。売り切れていたので、今回は新米じゃないです。すみません』
『気にしないでください。高杉は新米とか全然気にしないんで。新米じゃなくても美味しいですよ!』




「…仲良くないか?」
「俺とレイコさんは仲良しだもん。当たり前だろ?」





会話がわかんなくなるので、そのまま載せてます。
レイコさんが銀ちゃんのお手紙を持っているのでわかりにくくなる予定。


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