ついこの前まで一年生だったはずなのに、気づけばもうすぐそこまで迫ってきてる卒業。でもその前に、越えなきゃいけない難関がある。
「さーっむい」
「衣織おはよ」
「さっちんおはよ」
そう、入試。つまるところセンター試験である。わざわざ朝早くから寒い中出掛けるなんて冗談じゃないが、そうも言ってられない。
「衣織日本史だよね」
「さっちん地理だっけ?」
「そー。問題出し会えねーじゃん」
「なんで私日本史やってんの?」
「しーらない」
暗記物嫌いなのに。中学のとき地理のが好きだったから地理にすればよかった。
若干奇声をあげかけながらも電車に乗り込む。右も左も制服だらけ。皆向かう先は同じだろう。
「思ったよりも空いてるね」
「ね。もっと混むかと」
通勤ラッシュ程も混んでいない電車内を見渡す。ちらりと見えた見知った顔に視線が止まる。さっちんが衣織?と声をかけてくれて我に返った。
「どーした?」
「や、知り合いが。後で飛び付いてくる」
「おー、いってら」
さっちんの許可をもらったので後でいきなり走り出しても怒られないだろう。
電車を降り、もうすぐ会場が見えるだろう頃に走り出した。
「木村ー!!」
「うおっ、」
おはよ!!勢いのまま飛び付いて言えば、なんだ衣織かと呆れられた。申し訳ない。
「まさか会えるとは」
「まー会場同じっつってたしな」
「木村に会えたから今日一日生きれる気がするわ」
「明日は」
「ちょっちむりかな」
てっへと笑えばだろうなと返される。まあ私そんなにセンター必要ないですけど。
一連の流れを木村の横に佇んだままポカンと見つめる二人に気がついて視線をあげれば大男二人。
「……でっけ。いや間違えたお邪魔しました」
「お前どんな間違え方してんだよ」
「うっせ、本音が出たんだよ」
まず見えたのが肩だった。視線あげるだけじゃ足りず顔まであげた。私に身長分けてください。
「えー、と」
「あー……こいつ家の常連なんだよ」
「衣織ですどーも」
ぺこりと頭を下げれば後ろから宮地ーと呼ぶ声が聞こえて振り向けば、クラスの男子が居た。
「おー、おはよ」
「はよ。宮地早くね?」
「いや、普通じゃね?」
「お前今日第二科目目からじゃん」
「まーねまーね」
早いに越したことないからさ。そう言って木村達に向き直る。キョトンとした顔を木村以外の二人に向けられ、私まで同じ表情。
「……宮地?」
「うん、宮地衣織」
「俺も宮地。宮地清志」
「まじで?わーお、運命感じちゃう」
棒読み。ぱしんと木村に叩かれたが、これは仕方ないことだと思うんだ。
とりあえず大坪くんからも紹介をもらい、追い付いたさっちんも加わって控え室へと向かった。
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