忘れ物の無いように帰宅してください。その言葉にぞろぞろと帰り出す受験生達。ようやく一日目が、終わった。


「おつかれ」
「おー、宮地こそ」


鞄を背負い通りすぎ様に声をかければ笑顔で返された。いやー、眼福ですねありがとうございます。


「うわ、人多」
「人混み酔いそうだわ。これ絶対バス混むよね」
「だろうな」


一緒に帰るわけではないが、隣を歩く宮地くん。そしてなぜかはぐれるなよと言われた。解せぬ。


「うお、と」
「なにやってんだ。おら、手かせ」
「え、」


人の波に呑まれよろけてしまった。宮地くんには呆れられた。かと思いきや外まで一緒に行ってくれるらしく、手をとられる。あれ、なんか私青春してる?


「うっわ、さっみぃ」
「宮地くん宮地くん、風避け」
「ばっか、お前が風避けになれ。轢くぞ」
「理不尽。あと身長的に無理」
「……だな」


じっくり私を眺めたあとに納得するとは何事か。とりあえず寒いのでこっそり宮地くんを風避け代わりにしたら叩かれた。女子に手をあげるとはなんたる暴挙。


「つーかこれ、まじで帰れるか?」
「てか木村どこよ」


見回してみてもまったく見つからない。これだけ人で溢れ返ってれば当たり前だが。おまけに皆電話しているのか、ケータイが繋がらない悲劇。これじゃ待ち合わせもできやしない。


「というか私は木村よりさっちんを探せ」
「一緒に帰るのか?」
「送る約束してんだよね」
「うわ、羨まし」


そりゃ、ここまで混んでたらそう思うよね。これじゃ家につくのはいつになるのやら。
そろそろ電話の回線も落ち着いた頃だろうとかけてみれば、入り口付近にいるらしく辺りを見渡す。知らない人しか見えない。


「……宮地くん、私抱き上げれる?」
「は!?」
「いや、高いとこからなら見つけられるかなあと」
「……で、できなくねえ、けど」
「あ、やっぱいい。重いのバレる」


よく考えてみろ衣織。いくら仲良くなったと勝手に思ってるとは言え、今日知り合った男子にそんなことさせられるか。木村じゃないんだから。


「……」
「宮地くん?」
「なんでもねーよ。あ、大坪」
「木村は?」
「いるいる。おーい」


宮地くんの呼び掛けに木村達がこちらに気づきよってくる。さっちんも一緒だ。


「衣織ー」
「さっちんおつかれ」
「おつかれおつかれー。迎えどこ?」
「外行ったところに車止めてるって」
「おけい」


歩き出したさっちんに待ってといいつつも、木村達にまた明日と一言。帰ったらまずお風呂に入らなきゃ。


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