「みーやじ」
「はーい?」
「ほらこれ」
廊下で友達と会話してたら宮地くんに、声をかけられた。何かと思えばお弁当箱。わざわざ持ってきてくれたらしい。
「え、なに衣織。もう男捕まえたの?」
「羨ましいだろいけめんくん」
「え、」
「え?」
ふざけて言ったら何故か反応された。聞き返したらキョトンとした宮地くん。あれか、私なんぞに捕まりたくないと。わかってますともええ。
「あ、いや、その」
「いや、なんかごめん」
「お、おう……」
「微妙な空気出すのやめてくんない?」
呆れた顔の友人にてへぺろと真顔で言ってやれば溜め息を吐かれてしまった。今更だけど、皆の私に対する扱いがひどい。
「お、宮地やん」
「ん?」
知らない人に呼ばれた。あれ、この場合私じゃなくて宮地くんの可能性が……あった。今吉じゃんと受け答えしてる辺り知り合いだろう。友達が宮地くんと私を見比べてた。
「衣織」
「はい」
「……宮地くん?」
「そう、宮地くん」
名字一緒なのよ運命でしょとどや顔で言ったら爆笑された。おいここセンター試験会場。
「偉い元気な嬢ちゃんたちやな。宮地のクラスメイトか?」
「や、木村の友人」
「くっそ、衣織のせいで話しかけられた」
「私のせいかよ」
笑いすぎて涙目になってますよ奥さん。
周りの受験生が遠巻きにこちらを見ていてなんだかいたたまれない。視線から逃げるようにそっと宮地くんの背中に隠れてみた。
「宮地?」
「いや、あの、視線がいたくてですね」
「あー……」
「嬢ちゃんも宮地っちゅーんか」
「あい。宮地衣織です」
「今吉翔一や。よろしゅう」
「ういっす」
知り合いがどんどん増えるセンターの不思議。まるで友達作りにここへ来てるみたいじゃないか。私は試験とすれ違い通信をしにここに来てるんだ!
「衣織、戻んなくていいの?」
「あ、もうそんな時間?じゃあ戻るね」
「俺も戻るわ」
「ほなまたな、お二人さん」
はいはーい。ひらり手を振り二人ならんで自分たちの教室へと戻っていった。
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