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枕元でケータイが鳴く。目を開ければ知らない部屋。そうか、ここはゾルディック家じゃないんだ。


「はいもしもしアオイです」
『あーアオイ、起こしたか?』
「いや、大丈夫だよミルキくん」


眠そうな声してるぜ?と指摘され苦笑を漏らす。寝たのはほんの一、二時間前なのだから仕方ない。


『お前も災難だよな。よりによって兄貴に目付けられるなんてさ』
「そうかな?楽しいよ」
『アオイくらいだって、そんな物好き』
「自負してる」


いつまでもベッドの上に居るわけにもいかないので、立ち上がりケータイを肩と頬で挟む。そして、近くに置いてあった服にゆるゆると着替え始めた。


『ま、死ぬなよ?』
「イルミくんがいるから平気だよ」
『そーかよ。帰ってきたらゲームでもしようぜ。じゃーな』
「ん、またね、ミルキくん」


単調な電子音の聞こえてくるケータイをベッドへ放る。着替えおわったタイミングでイルミくんが部屋へ入ってくるもんだから、監視カメラでも付いてるんじゃないかと思った。彼ならやりかねない。


「おはよ。よく眠れた?」
「それなりにね」


たった一、二時間の睡眠でよく眠れただなんて、誰が聞いても答えは明確だろう。彼はきっと、その感覚が麻痺しているんだ。


「今から仕事だけど、アオイ大丈夫?」
「うん。纏と絶。あと練やってまってる」
「この前みたいに倒れないでよ」


はあい。聞き流すように返事をして視線を窓へ投げる。流れる雲と青空が見えた。今日は空の機嫌がいいらしい。


「じゃ、いってくる」


いってらっしゃい。言いながらひらり、手を振る。扉に遮られ見えなくなった背から視線を外しソファへ腰を下ろす。


「……やるか」


今度は、倒れないように。



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