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じわじわと、意識が浮上する。ああ、いつの間にか寝てしまったのだと、そう思ったのもつかの間。よくよく考えてみれば、私は気絶していたのだ。


「気がついた?」
「……ああ、イルミくんか」
「なに、その反応」
「なにも」


薄暗い部屋に寝かされ、気が付けば側に人が居て。覚醒する以前に声をかけられては反応も遅れると言うもの。緩慢な動きで起き上がれば、手を差し伸べられる。これは、着いてこいとでも言いたいのだろうか。その手に手を重ねれば抱き上げられるのだから、手を出す意味がどかにあると言うのか。


「ねえ、どこにいくの?」
「仕事」
「……修行は?」
「俺がする」
「ふうん」


拒否権なんてどこにもなくて。この様子だとシルバさんにも話は通っていそうなので、私が異論を唱えたところで通ることはないだろう。私を連れていく必要は?と問えば、癒しに決まってるでしょ?なんて。


「イルミ君頭沸いてる」
「アオイ程じゃないよ」
「言葉失ったわ」


私のどこをどう見たら頭沸いてると言えるのだろうか。文句を告げる代わりにむくれれば頭を撫でられる。それで許してしまうのだから自分も困ったものだ。


「ねえ、荷物は?」
「要らない。向こうで買えばいいでしょ」


これだから金持ちは。どうしてこう、有るものを大切にしないのだろうか。わざわざ新しいものを買わずとも今あるもので構わないというのに。結局はそれも使わなくなるのだから。


「そういえばアオイ、念は?」
「纏だけなら」
「へぇ」


無理するな。そう言ってまた撫でられる。なぜ私が念の使いすぎで気を失ったことを知っているのだろうかと思ったが、きっと、シルバさんあたりが告げたのだろう。
元々、使い方は知っていたのだ。ただ、やろうとしなかっただけで。系統もなにも調べてなんていない。ただ、基礎の基礎を固めているだけ。


「アオイ」
「なに」
「仕事、約一年」
「バカ」


長い旅が、始まりそうだ。



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