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そろそろ行かなきゃなぁと揺れる木々を見つめながら一人思う。久々に帰った来た家はそれなりに落ち着いたし楽しかった。けれど、いつまでもここに居る訳にはいかない。


「アオイ」
「ゼノさん」
「いくのか?」
「まーね。もっといろんなものを見たいし」


へらり、笑えば渋い顔をされてしまう。彼は、いや、彼等は私がこの家を出ていくのをあまり好まない。期間も長ければ、その間音沙汰無し。特にカルトくんは私に懐いているから今回も説得するのが大変だろう。


「好きにしろ」


そう言って撫でてくれるゼノさんにはぁいと返事を一つ。歩き去る後ろ背を見送りながらその場に座れば、今度は違う人から声を掛けられた。


「行くって、どこに」
「あ、キルア」
「なぁ、どこに行くんだよ」


縋る様に肩を掴まれ問われる。その瞳は不安に揺れていて、罪悪感に苛まれる。
どこ、と聞かれても行き先は私が決めるのではなくビスケで、私は一言、わかんないとしか答えられなかった。


「……んだよ、それ」
「ごめんね、キルア」
「謝んな!……なんか、すげぇ惨めになる」
「……うん」


力なくその場に座り込んだ彼をそっと抱き寄せる。なんでだろう。なんで、彼等はこんなにも私を好いてくれるのか、全くわからない。あやす様にゆっくりと背中を撫でれば、俺も行きたいと小さな声でつぶやかれた。


「……私も、キルアを連れて行きたいよ」
「じゃあ……!」
「でも、連れて行けない」


一瞬希望が差し込んだ様な目をしたが、すぐにそれも陰ってしまう。だって、彼をここから連れ出してしまったら、きっとこの家全体に迷惑がかかる。それだけは避けたい。それに、私が何者であるかを探す旅になんて、同行はさせられない。


「……んでだよ」
「ごめん」
「だから……っ、」


私を睨みつけ、そしてハッとした様に目を見開く彼。もう一度ごめんと謝れば、もういいよと諦めた様に言った。


「……また、帰って来んだろ?」
「うん。いつになるかわかんないけど」
「連絡くらいしろよ」
「じゃあまずは携帯買わないと」
「買ったら俺に真っ先に連絡しろ。後で番号教えるから」
「ん、わかった」


約束。そう言って小指を差し出せば、キョトンとした顔で首を傾げるキルア。ああ、そうか、ここでは指切りなんてきっとしないんだ。そう思って淋しくなったが、無理矢理キルアの手を取り小指を絡めた。


「なに、これ」
「約束する時のポーズ」
「……ふぅん」


変なの。そう告げた彼の口元は笑っていた。



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