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「あ、見えた」


ククルーマウンテン。そう呟けば後ろからぐいっと襟首を引っ張られる。いいじゃないか、1年振りに帰って来たんだ。少しくらい飛行船から身を乗り出したって。


「危ないでしょーが、このおばか!」
「痛いよビスケ」
「あたしはねぇ、あんたの子守りを頼まれてんのよ!」


腰に手を当ててプンスカ怒るビスケは可愛い。見た目だけならとても。
ネテロさんが暫くは忙しいから、とここ2.3日前にビスケに託され、確かに本部の中は慌ただしかったなぁ、と数ヶ月滞在した建物を思い出した。


「ほら、降りる準備!」
「はいはーい」
「返事は一回!!」
「はーい」


まるで母親だ。本部に滞在している際も、時折顔を出しては私が元気かどうかを確認し、満足そうにしていた。本当に、私の周りは私を甘やかす人でいっぱいだ。マーメンやチードル、時々ピヨンちゃん、となんだかんだ偉い人達とも顔合わせをしたし、本当に人脈が広がった。


「あれ、ビスケどこいくの?」
「あたしは買い物よ〜。だってアオイについて行ったってしょうがないじゃない」
「まぁ、そっか」


じゃあねと手を振る彼女に手を振り返す。そう言えば連絡手段がないが、彼女のことだ、私なんて直ぐに見つけてくれるだろう。
さ、行こう。と近くにあった観光バスに乗り込み、懐かしの我が家を目指した。


ーーーーー


「大丈夫、ゼブロちゃん」
「おお、アオイお嬢様、お久しぶりです」


ゴロツキに突き飛ばされた門番もといお掃除かがりのゼブロに手を差し伸べる。いやはや申し訳ないと人の良さそうな笑みを浮かべて彼は立ち上がった。勿論BGMは先ほどのゴロツキの叫び声。小さなドアからカシャンと音を立てて放り出された彼らの骨を見て、再び悲鳴が上がった。


「お嬢ちゃん、早く乗って!」
「あ、ここ私の家なんで大丈夫です」


微笑みとともにそう告げれば、瞬間声をかけて来た人の顔が恐怖に染まる。そして慌しく走り去るバスを見て、失礼なと一言。


「ゼブロちゃん、電話かしてもらってもいいかな」
「ええ、勿論です」


どうぞどうぞと守衛室へ通され、電話を渡される。ここからの電話じゃ執事室にしか繋がらないがいいだろう。


『はい、ゾルディック家執事室』
「あ、もしもしゴトーちゃん?アオイだけど。今から屋敷に向かうからってカルトくんに伝えてもらえる?」
『お嬢様ですか。畏まりました』


本当に伝えてくれるのかは不安なところだが伝える方法がこれしか無いのだから仕方ない。受話器を置いて、ありがとうと一言ゼブロに告げ、試しの門を開けた。


「2か……まだまだ力が足りないなぁ」


7の扉を開けるには256t以上の力がいるから……と、ここまで考えてやめた。途方もない話だ。最も、念を使わないで2なのだから、使えばきっと4くらいは開けられるはず、と自身を励ます。
ガサ、という音に目を向ければミケ。久しぶり、と声を掛ける前にひょいとその口で持ち上げられた。


「戯れるのは後、先に屋敷に行きたいの」


そう告げれば、何も言わずにその背に乗せてくれるミケ。相変わらず、聞き分けのいい子だ。暖かくも広い背中を撫でて走るよう合図をすれば、あっという間に屋敷が見えてくる。その前では連絡がいっていたのだろう、可愛らしい着物を着たカルトくんと、銀髪の男の子。きっと彼が、キルアなのだろう。


「姉様!」
「カルトくん!大きくなったねぇ」


立ち止まるミケの背から飛び降り、抱きついてきた彼を抱き上げる。のだけれど、身長差が埋まってしまったのかさほど地からはなれない彼の足元を見て、私成長してないのかな、なんて残念な気分になった。


「あんた、誰?」


そっとカルトくんを降ろせば投げ掛けられた質問。その答えとして、名前を聞くならまず自分が名乗らなきゃと伝えておいた。


「アオイ姉様、キル兄様だよ。ほら、前に僕が話した」
「うん、なんとなくわかってた」


慌てて私に説明するカルトくんが可愛くてその頭をなでれば嬉しそうに顔が綻ぶ。それに相反するように、キルアの顔が不機嫌に染まった。


「あんたが親父の言ってたアオイなわけ?」
「姉様とお呼びよ。一応姉の立場なんだから」
「やだね」


そう言って舌を出す彼は子供だ。そんな彼の様子を見てカルトくんはフォローする様にキル兄様本当はもっと優しいんだよ、と小声で私に告げた。


「カルト、聞こえてるから」
「ご、ごめんなさい」
「いいのよカルトくん。わかってるから」


そう優しく微笑めば彼の顔がぱっと輝く。とりあえず先にシルバさんに報告ね、とカルトくんの小さな手を取り足を進めた。後ろからは、待てよと追いかけて来る気配がしたが、知らない顔をしておいた。



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