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「そこのお馬鹿娘!特訓もせずに何やってるだわさ」
「サボってるに決まってるでしょう?」


反省の色も見せずにしゃあしゃあと告げれば笑顔で怒るビスケ。そんなに怒ってばかりだと皺が増えるよと悪びれもせずに告げれば、転がっていた岩がとんできた。まあ怖いこと。


「潰す……いっぺんすり潰す」
「赤子もびっくり、ギャン泣きですよその形相」
「誰のせいだと思ってるんだわさ!」


歳に似合わず可愛らしい服装なのに、まるで般若の様な顔をするもんだからたまったもんじゃない。いいから黙って特訓おし!と積み上げられた岩山を指差された。
特訓、とは言っても身体能力はそれなりに底上げしたわけだし、今の私は念を強くする他にやることが無い。とりあえず小さな紙切れで岩をカットして行くところから始めろとのこと。なんだっけ、これ。周?


「早くやる!」
「はぁーい」


投げられた紙切れをしっかりと受け取り、力をそこに集中させる。小さな石を拾い上げ、紙を突き立てればかさりと音を立てて紙はひしゃげた。


「こ、これは……」


失敗である。ビスケに何度コツを教わっても何回繰り返してもうまくいかない。そもそも私は念を自分以外に纏わせることすらできないのだ。うまく行くわけが無い。


「あーもうやめやめ!何回やったってできっこ無いんだもん!!」


なんだか負けた様な気がして悔しくて持っていた紙切れと石を投げ捨てる。その場にゴロンと転がって空を見上げれば、随分と機嫌が良さそうな青。私の心とは全くもって正反対。そんな私を見て、彼女は再び、なにやってるだわさと呆れた声を出した。


「だって、できないんだもん」
「根気が足りない!」
「……そう、なのかなぁ」


確かにやる気は無い。けれどここまで出来ないとどうにもそれだけでは無い気がしてならない。憶測でしか無いのだけれど。


「纏と絶、それと練しか出来ないんだもん」


周だけじゃ無い。凝も、硬も、堅も、隠も、流すら出来ない。オーラを自分の意思で動かせないのだ。
習得してからもう一年も経ってるのになぁ、と零れた言葉をビスケが拾い上げる。


「その一年間、全くなにもしなかったんじゃないの?」
「まさか、ぶっ倒れるまで念を練り上げたよ。なのにこのざま。才能無いのかなー」


案外真面目だったのね、なんて呟く彼女に失礼と言い返す気力もなくひたすらに流れる雲を見つめる。
もういい、私雲になる。とわけのわからない事を呟けば、なれるわけないでしょおばか娘と溜息を吐かれた。


「だってぇ」
「……わかった。もう周はやんなくていいわよ。その代わり、私が試験官やるまで少なくとも後3日はあるからその間たっぷり組手でもやるわよ!」
「え!??」


出来ない事を無理してやらなくていいと言われたのは嬉しいが、それ以上にキツイ特訓を提案されて、これなら出来なくとも紙とにらめっこしていた方がマシだったなんて思った私は悪くない。



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