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こんな世界くそだ。大した準備もできずに連れ出されるだなんていったいどういうことだと問い詰めたい。


「ありえないバカにしてる」
「誰もばかになんぞしとらんよ」
「いや、してるだろ」


いい加減私の人権をください。むしろ私が作ればいいのか。無理だろう。
そもそも私はハンター試験とか興味ないと何度言えばわかるのだろうか。そしてハンターになるつもりすらないというのに、このくそ師匠、どうしてくれる。


「準備時間はちゃんとやったじゃろう?」
「ああ、あの短時間」
「十分じゃろうが」
「いえ、まったく」


短時間というか数秒というか。私の周りの人間はとことん私に冷たいらしい。
ため息をつき外を眺める。どう足掻いたって私はここから逃げ出せないのだ。諦めて身を任せるのが一番いいのだろう。


「ほれ、もうすぐ着くぞ」
「……はぁい」


試験見学という名目上の顔合わせ。これ以上私の顔を広げてどうしたい。知り合いばかり増えても、動きづらくなっていくのは私なのだ。もとより、何をしようというつもりもないのだが。


「アオイ」
「……なに?」
「本気で嫌なら、ワシを殴り飛ばしてでも出ていくといい」
「……いや、師匠殴るなんて自殺行為誰がすると?」
「ほっほっほ、それもそうじゃな」


本当はわかってる。ただみんなが優しいだけなんだってこと。受け入れたら、なんだか自分がダメになるような気がしてるだけなんだ。
近づく地を眺めながら小さく拳を握る。昔の、私がここへくる前の友人は、家族は元気にしているだろうか。わたしは、あの世界にいた時より、強くなれたのだろうか。


「わかるわきゃねーだろ」


比べてくれる人も居ないのに。比べる対象もここにはないのに。
たった8年という期間で前世の記憶もずいぶん薄れてきた気がする。自分の顔がどんなだったかさえ曖昧で。
着いたぞと言われようやく握っていた掌を解いた。掌に滲んだ血に気付かないふりをして先に降りたネテロを追った。


「ねえ、私何してればいいの?」
「そうじゃの……ちとまっとれ」


そう言ってさっさとどこかへ行ってしまった彼を、適当に座って待つ。この状況なら、帰ろうと思えば走ってでも帰れるのだけれど、なんかもう、いいかなって。諦めて、染まる……とまでは行かないけれど、ここにいる以上、楽しんだ者勝ちかなって。


「この子ですか会長、私に会わせたい子って」
「うむ、此奴はアオイ。なかなかいいセンスを持っとるぞ。してアオイ。試験中主の面倒を見るビスケット=クルーガーじゃ」
「最後の一文何かがおかしい」
「ほっほっ、まあそう言うでない。ビスケ、あとは任せたぞ」
「はいだわさ」


面倒見るってなんだ。ネテロさん私に関しては放置か、そうか、分かった。
ぐれてやる。今度こそ不貞腐れた私に、二人は苦笑をもらしただけだった。



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