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覚えているのは、四大行のみ。ほかを覚えるにあたって、もっと身体を鍛えなくてはならないらしい。まあ、なんと面倒なことか。しかし、よくよく考えてみればつい一年ほど前まで村で暮らす普通の小娘だったわけで、岩を砕くことは愚か、木を切り倒すことさえできなかった身である。


「……帰りたい」
「何を言っとる、まだ始まって4時間しかたっとらんぞ」
「4時間も、でしょ。アオイつかれた」


基礎の基礎から鍛え上げ、応用に至るまでに約二ヶ月。これからまだまだ覚えなければいけないことがたくさんあると言うのに、もう二ヶ月。いつになればゾルデイック家に戻れるのやら。


「……カルトくん、君との約束は遠い未来まで果たせそうにないよ」
「何をいっとるか。ほれ、さっさと立て」
「えー……」


体力がないわけではないがやる気が起きない。と言うかめんどくさい。なんで私がこんなことしなければいけないのか。それも全てあいつの、


「……あいつって誰よ」
「アオイ」
「あー、はいはいやりますよ」


投げ出していた四肢に力を入れ、重い腰をあげる。全く、か弱い乙女をなんだと思っているのか。もっとも、私自身は自分をか弱いだなんて思いたくないけど。そもそも乙女ですらない。


「お前さん、いい加減やる気出せんかの?」
「無理」
「あやつ等の前でもか?」
「ゾル家でもこんな感じだったけど?」
「ほお……」
「だってやんなくてもある程度できるようになるし」


そんなに今詰めなくても今まで何とかなってきたんだから別にそんなに頑張らなくていいじゃないか。私は念を覚えたいなんて一言もいってない。


「末恐ろしい娘じゃ」
「ありがとう」
「褒めとらんぞ」


褒められてないだなんて知ってますけど。ため息をついたらため息吐きたいのはこっちじゃと言われた。私が何をしたというのか。いや、何もしてないのがいけないのか。


「ほれ、さっさとやるぞ」
「はーい」
「……どれ、組手の相手でもしてやるか」
「……この鬼ししょーが」


明日は筋肉痛か。それともアザだらけなのか。とりあえず、さっさと修行を終わらせたい所存。



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