白の情報屋と静雄と創始者と臨也
2011/10/10 19:21

キリリク没。
暴力表現有り
















嗚呼、
今日は全くついてない。
“白の情報屋”三好吉宗は痛みで薄くなってきている意識の中で冷静に考えた。


時は数刻前に遡る。
場所は西口公園。時刻は7時前後だったか。
今日はダラーズを名乗るひと達と情報の売り買いをする日だった。
何時ものように情報を喋らせて、こちらも相手にとって有益な情報を与える。それだけの予定、だった。
「―――死にさらせ!」
「……―――っ!」
鈍い音。そして後頭部に衝撃。
目の前のがスパークしたかのように瞬いて、視界が揺れる。悲鳴をあげそうになるのをなんとか噛み殺す。声をあげたらそこから正体を突き止められる危険があるからだ。
急な襲撃の理由、なんて分かりきってる。
分かりきってるからこそ、少しでも油断してしまった自分に腹が立った、が、今はそんなことを考えている余裕はない。
フードが脱げないように押さえながら地面にうつ伏せになる。相手は複数、しかも先制をとっているし此方は負傷している状態だ。逃げるのは不可能だと判断していいだろう。
それなら攻撃に耐えて助けを待つ方が可能性がある。それに彼らの目的を考えれば不用意に顔の特徴を晒せない。
そう、彼らは、謎の存在である“白の情報屋”の正体を暴きに来たのだ。


「……ん、?」
カップラーメンを啜るのを一時中断して画面を食い入るように見る。彼が見ているのはダラーズの掲示板の、とある書き込みだった。
『今から白の情報屋の正体を暴きまーす!素顔写メってやるから期待してろ!』という内容と、写真データがひとつ。写真データには、白のパーカーを着た人間が蹲っているのと、複数の男の姿、そしてパーカーに滲む赤い血が写っていた。
背景は公園。多分西口公園のことだ。
「………これ、は」
不味い。非情に不味い。
こんな暴力的な事件が起これば、せっかくいい方向にあるダラーズがまた悪い方向に向かってしまう。それはなんとしても避けたいところだ。なんとかしなければ。
取り合えず管理者権限を使用して掲示板の書き込みを消去。書き込みをしたIPアドレスをブラックリスト登録する。これで情報の蔓延と新たに書き込みさせることを暫く封じることはできた。
あとは、現場の収拾だ。流石に自ら現場に行っても何も出来ないだろう。ならば、
「(これは、最終手段にとっておきたかったんだけど……仕方ない)」
新たに電子メールソフトを立ち上げる。カタカタと小気味いい音をたてながら内容を打ち込み、アドレスを確認、送信。
ふーっ、と長く息を吐き、身体を伸ばす。これでお膳立ては終了だ。あとは掲示板を注視しつつ情報の規制だ。
「今日、チャット行けるかなぁ」
再びラーメンを啜り始めながら、ダラーズの創始者は再び青みがかった双眸で画面を見つめた。


同時刻、ひとりの男の元にメールが届いた。差出人は、ダラーズ。
「……これは、マジなのか」
愕然とした表情で画面を見つめる男。びきびきと、携帯が歪な音をたて始める。
「……っクソ、あんだけ言ったのにまだやってたのかよ……」
びきびき、ばきり。
男の携帯は男の異常な握力に耐えきれず画面は砕け、機体はひしゃげた。思わず舌打ちする。
染めたせいで傷みの激しい金髪をかきあげながら、サングラス越しに西口公園の方角を見やる。
「―――吉宗、今、いく」
それだけを残して、男はその場を離れた。


更に同時刻。西口公園の片隅。
殴る蹴る等の鈍い音、そして青年達の嘲笑が響くなか、黒に身を包んだ青年が携帯を片手にほくそ笑んでいた。
「全く、君の幸運は何時まで続くのかなあ―――白の情報屋さん?いや、むしろシズちゃんホイホイのほうが合ってるかな。君の近くに居ると何時シズちゃんが来るのかヒヤヒヤさせられる。君の周りには便利な大人たちが多いからねえ。やんちゃしても尻拭いはしてくれる。それでも、巡り巡って自分に返って来るけどね。それも大人になる第一歩だよ。まあ、今回も君の幸運は続いたようだし、俺は帰るかな」
ひらり、と公園に向かって軽く手を振ると、黒の情報屋は池袋の闇へ溶けるかのように消えて行った。




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