ヨシヨシパロ
2011/12/23 23:34

置く場所に困った結果
ヨシヨシとうみねこクロスオーバー
メタ世界にて





























シンガポール行きの飛行機に乗り込み、シートベルトを着用する。
エンジン音が鳴り響くなか、飛行機は滑走路を爆走し、ゆっくりと機体を上昇させていく。
身体にかかる重力。この体験を僕は一体何度繰り返したんだろう。数えるのも億劫だ。きっと途方もない回数だから。
ゆっくりと目を閉じて視界の情報をシャットアウト。飛行機に乗ったとき特有の耳の痛さを感じ始めたころ。

ぱりん、と音がして、世界が一転した。

閉じたときと同様にゆっくりと目を開ける。目にとびこんできたのは機内、ではなく、紫がかった宇宙のような途方もない空間。時おり瞬くのは星、ではなく、世界の“カケラ”だ。

「―――今回のカケラも、つまらなかったわ」

幼い少女のようであり、老熟した女性でもあるような声。と同時に、ふわりと軽やかに舞い降りた藍色の髪の少女―――“奇跡の魔女”ベルンカステル。
墨汁を垂らしたかのような滲んで混沌とした黒い双眸をぴくりとも動かすことなく僕を見据えた。

「そうかな」
「……このカケラと同じ展開をもう56回は見たわ」
「そうだっけ」

そう返すと信じられないものを見るような目で見られた。

「……貴方、狂ってるんじゃないの」
「自覚はないけど、そうかもしれないね」

他人事のようにそう言った。
退屈を嫌う魔女ならば、何度も同じ展開を繰り返す僕のカケラはひどくつまらないものなのかもしれない。

「……知ってる?」
「ん?」
「……ここは、牢獄なのよ。カケラの牢獄。アウアウローラのお気に入りのかごのとり、それが貴方」
「うん、知ってる」
「……どんなに足掻いても、どんなに変えようとしてもこの無限ループが止まることはない。貴方がシンガポール行きの飛行機に乗るたび、あなたはまた田舎の友達に別れを告げるとこから始まるしかない。―――あの惨劇よりも酷いわ、ゴールが用意されていない。サイコロでは6は出せても7は出せない。たとえ奇跡の魔女である私でさえも、0%の確率はどう足掻いても出来ないのよ?」
「うん、ベルンカステルの言ってることは正しいよ。―――でもね」

そう言ってポケットからサイコロを取り出す。ぽん、と投げるとサイコロはあるはずのない床を転がっていく。
やがて、サイコロの動きが止まった。と同時に僕の身体が光り出す。次のカケラへの合図だ。
ベルンカステルが珍しく息を飲む音がした。

「サイコロで、7は出せるんだよ」

ぱっくりと二つに分かれたサイコロ。出た目を足せば7になる。
それを認識してから、僕はカケラへと吸い込まれていった。






「―――うそ、」

ぱっくり割れた7のサイコロがカケラへと変化する。
覗きこめば、ベルンカステルにはすぐに分かった。
今、ここで。まったく別の形状をしたカケラが精製されたことに。




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