神様なんて大嫌い!


 前回までのあらすじ。
 順風満帆な腐男子人生を送っていた俺(二一歳大学生)は、平凡なアパートの一室で俺の帰りを待つBLゲームの難攻不落ツンデレキャラに会うために、バイト帰りにちょっとした近道をした。
 そしたら何と飲酒運転らしき車に轢かれて呆気なく死んでしまいました。
 しかしっ、気付けば俺は俺のまま、イタリアに転生していたのです……!
 ジーザス! 何で記憶なんて残したんだ! これじゃあ難攻不落ツンデレキャラのトゥルーエンドとエピローグが気になって仕方ないじゃないか! がっつりエロシーンでニヨニヨしたかったのに神様のバカヤロウ!
 ……と毎日のように憤っていたら、なんと手から炎が出ました。人体発火とかいう恐ろしいものじゃありません。
 まじまじ見つめていると、この世界の母親に見つかってしまい、もっとよく見せてとせがまれた。アルェー、と内心首を傾げていたら、ママンはとんでもねぇ発言をしてくれやがった。
 あなたはボンゴレ九代目の息子だわ、と……!
 うんもう目玉飛び出るかと思った。何が悲しくて我らがボスに成り代わらなきゃなりませんか。マジで神様を恨んだとも。呪ったとも!

「俺がボスじゃあ、スクザンとかツナザンとかザンスクとか楽しめねえじゃねーかぁぁぁっ!」
「ぐぁっ! ……っテメエこのクソボス何しやがる!」
「るせぇっ! 何で俺がボスなんだ!」

 俺がザンザスに成り代わってからの人生を回想していたら、怒りがふつふつ湧き上がってきたので、手元にあったグラスを報告書の提出に来ていたスクアーロの頭に投げつけてみた。中身はウーロン茶だ。
 ……つか俺、ボスに成り代わって暴力的になったよな……。前は人にグラス投げつけたり出来なかったのに。おそろしや……。

「……またかぁ。そりゃお前が、十代目の椅子なんかいらねえって言うからだろうがぁ。俺はイクスの下にしか付きたくねえのに……。っても流石に、九代目の息子がボンゴレから独立するわけにはいかねぇだろぉ。だからヴァリアーのボスで妥協してやったんだぁ」
「そんな話をしてるんじゃねえよこのカス! あと何で上から目線だ! どうせ生まれるならヴァリアーの平隊員になってザンザスとかスクアーロとか眺めていたかったっ!」
「ザンザスはお前だぞぉ……。本格的にどうしたぁ」
「うるせー……」
「……俺がお前をボスに推薦したのが、そんなに気に食わねえのかぁ、イクス」

 スクアーロは濡れたまま、しゃがんで俺のデスクに肘と顎をついた。こいつは任務中以外は二人きりのとき、俺がこの世界で与えられた本名を呼ぶ。ザンザスって名前は、ヴァリアーのボスとしてのモノってことにしている。だってそれは我らがボスの名前だし!
 この世界的にヴァリアーを率いているのは「XANXUS」じゃなきゃならんだろーし。いや原作通りに進める気なんて既にないけど。
 だって原作のようにゆりかご起こして八年間も氷付けにされてみろ、一大事だろ腐男子的に。旬ジャンルは過去のものとなり取扱サイトもサークルも減って過疎ッたり、その間に出会えるはずだったろう新たな萌えとも出会えず新境地も開けず何より日本のイベントにも行けず!
 つまり俺の隠し部屋に貯蔵されるはずの神々の汗と努力の結晶と言う名の薄い本とも出会えないということだ。そんなこと耐えられるか!
 というわけで俺は原作より俺の萌えを取りました。だって俺腐男子だし。

「あー、そうだスクアーロ」
「う゛お゛ぉい……人の話を聞けぇ。……何だぁ?」
「幹部連中にそろそろ鍛錬のメニュー量倍にしとけって伝えろ」
「……どう言う事だぁ」
「ジジイから、日本にいる十代目ファミリーの強化を頼まれた」
「…………あ?」
「あのおじいも無茶させるよなあ。ツナ達まだ中学生なのに、ガリガリ現場で暗殺しまくってるヴァリアー幹部と戦わせようなんて」
「ツナ? は? おいイクス、俺にも分かるように説明しろぉ」

 ぬう、任務中じゃないとボスっぽく喋ろうとしても一秒ともたん……。あ、ちなみにツナとはあいつがちっちゃい頃に会ったことがあるのだ。ツナは覚えてないだろうけど。
 あの時は一人で池袋とか秋葉原とか(黙って)行って後で滅茶苦茶九代目に怒られたっけなー。仕方ないじゃないか、乙女ロードが俺を呼んでいたんだ。

「お前が俺をボスに推薦してくれて良かったと思うこともあるぞ、ちゃんと」
「ちょっ……う゛お゛ぉぉぉい! 話をあちこち飛ばすんじゃねぇ! 一つ終えてから別の話にしやがれぇ!」
「おい机ずらすな」

 何てったってボスになったら九代目が就任祝いだって俺専用自家用ジェットプレゼントしてくれたし。そのおかげで日本行き放題だし!(その間の仕事は勿論鮫に押し付けている!)そのおかげで年に二度の祭典だけじゃなく、オンリーイベントとか行き放題だし!(その間の仕事は以下略!)帰りに池袋に寄って薄い本を更に買い込んだりアニメイト行ったり出来るし。日本のゲームも買いに行けるし。ボスの給料マジパねえ。あとSランク任務の報酬もパねえ。なあにこのオタ充……!

「それもこれもお前が俺をボスに推してくれたからだ。感謝してるぞカスザメ」
「だったらそこは普通に名前で呼びやがれこのクソボスがぁ!!! それでも嬉しいとか思ってねえからなぁ!!!」

 でも顔赤いぞおまえ。それにしてもこのスクアーロ、ボスのこと好き過ぎである。ボスが俺なのがちょっと切ないけどな!


たとえあなたが何をしていようとも、それをしている自分を愛せ。
――タデウス・ゴラス


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