「生徒会とふーきってけっこー、大変でさー。その報奨みたいなものだよ。いろんな特権があるぶん、背負う責任もあるんだわ。おーさまが、きらきらの服着て広い宮殿に住んでるのは、国を背負ってるからっしょ。それとおんなじなんだー。このガッコ、せんせーより生徒会とふーきのがちょっぴり偉かったりすんの。そんだけ責任があるわけだ。求められてるだけの働きをしなきゃだから、たーいへん」
「ま、それだけってわけでもねえが」
「……どういうことですか?」
「べっつに、顔で選んでんじゃねーのよ? でもふさわしい能力を持った奴が、たまたま全員びけーなの。……まあつまり、生徒に人気があるから、隔離してんの。三年はまだしも、同室になっちゃった奴への嫉妬がやべーから」
「はあ……。やっぱり、噂ってマジなんですか。……その、生徒が大半ゲイやて」
「そだよー。なかにはバイもいるけどにぇ。ノンケは一割くらいじゃなーい?」

 あっけらかんと肯定されて、少し戸惑った。偏見があるのかと訊かれたので、首を横に振った。
 何も性癖だけで人間が構成されているわけでなし。そもそも同性愛者であるからといって、それだけでその人そのものを否定する理由にはならないだろう。
 例えば尊敬している人がゲイだったと知って、それで相手を見下すのは、否定した本人の品性の問題だ。

「あ……何かだいじょーぶくない? 同室でも」

 そうやって言えば、二人が満足げに笑んだ。その後で、義隆の言だ。
 相手が相手だ、と宍戸がまた苦い顔をした。

「四〇一……お前の部屋だが、同室者が難ありでな。四十九院佑(つるしいんたすく)と言うんだが」
「佑さ、去年問題起こして、留年したんだよ」
「問題」
「……どーしつ者をボコって、びょーいん送りにしたんだ。この相手がけっこーな家の奴でさ。相手方は怒って、佑を退学にしろーって言ってきた。でも佑の家がそいつより上流ってこともあって、停学ですんだんだけど」
「それ以前から、素行不良やらで問題視されててな。今じゃ目が合っただけで殴られるとか言われてるが……さてどうやら」

 物憂げな義隆も気にかかったが、それよりも迅は、何故佑がそのような凶行におよんだのかが気になった。こうして聞いた話では、四十九院佑は手のつけようがない問題児だと言う印象を受けるが、迅は憶測で物事を決め付けるのが好きではない。
 佑がどういう人間かを決めるのは、佑と話して彼の内実を知ってからでも遅くはないのだ。

「しっしーさぁ。クラス分けも部屋割りもせーせき順なんだから、変えよーないじゃん」
「だから難儀してんだろ」
「あの、宍戸はん。部屋の鍵いただけますやろか」
「――?!」

 二人そろって、大袈裟なほどに驚いている。宍戸に至っては正気か、とまで訊いてきた。

「せやかて。四〇一が俺の部屋なんですやろ」
「だが」
「まあ、これでも喧嘩慣れはしてますよって、病院送りにはならへんと思います」
「佑、めっちゃ強いよ? あいつの地元一帯占めてたチームの頭だったんだぜ?」
「うーん、それなりには応戦出来ると思います。四十九院が猛獣かどうかは、俺が決めますさかい」

 迅に譲る気がないのだと知ると、宍戸がいくらか安堵のような色を滲ませてカードキーを渡して来た。鴇色のカード、その上方には朱のラインが二本、水平に入っていた。

「そのラインは次席の印だ。一本が首席。首席と次席は遅刻が免除される。終了五分前に行こうが参加扱いだ。カードキーは買い物や食堂で必要になるからな、無くすなよ」
「ちなみに佑が首席だよー。テストでじょーいさえキープしとけば、そうそう剥奪されないお! それじゃあ、お部屋いこっかー」

 旗を振るような仕草をしてから、義隆は迅を伴った。宍戸に一礼してから背を向ける。
 エレベーターの中、四階で降りる直前に義隆に囁かれた。

「佑をよろしくね」

 ――と。




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