会場のホテルに着いて、各々荷物をあてがわれた部屋に置いてから大広間に集合という運び、その道すがら村上は一人歩く迅と遭遇した。
 大広間まで一緒に行くことになって、他愛ない話をしつつも、やはり車中でのことが気にかかる。
 村上は意を決して、話題をそれにした。

「あの、お節介ならごめんなさいだけど……四十九院君と、何かあったの?」
「……なして?」
「だって、四十九院君、心山君の隣座らなかったし、心山君も四十九院君に話しかけなかったし……。だから、変だなって思って、あの……その……」
「あー……」

 迅が一気に複雑そうな顔をして前髪をかき上げるものだから、村上はおろおろして語尾を小さく濁してしまう。
 それでも、また少ない勇気を振り絞って口を開く。

「クラスのなかで、心山君が四十九院君と仲良しなの、認める子増えてるの。心山君や小早川君たちと一緒だと、四十九院君は楽しそうだからって。心山君も、とても面倒見よくて、仲良くなりたいなって子もいるの。ギクシャクしてる二人を見たら、僕たちとても心配です。だって本当に心山君たち、一緒にいるの楽しそうだったから……あの……えっと……ごめんなさいです口出しなんかして!」
「へ?! あ、いや別に……」
「と、とにかく、僕が言いたかったのはですね、もしケンカしちゃったなら、仲直りしてくださいっていう……あああ大きなお世話ですよねごめんなさい! 僕先に行ってますー!」
「あ、ちょぉ、村上?!」

 言ってしまった……というあまりの緊張と羞恥に村上は走り去り、残された迅は呆然と脱兎の消えた角を見る他なかった。

「仲直り、か……。どう……謝ったもんかなァ……」

 謝らなければ、という心はもちろん、迅のなかにある。あるけれど、その伝え方が、今はまったくわからなかった。
 ――どうすれば、蟠ることなく決着するのだろうか。
 立ち尽くしたまま、迅は重たい息を吐き出した。

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