アビス主
彼は常には凪いだ海のような眸に明らかな怒りを宿して、目の前に立ちはだかる男を睨み上げた。
「貴様はそうやって人を決めつけて……! 勝手に俺を変革者呼ばわりするな!」
彼の怒気が、大気を震わせる。
「貴様らは答えを急ぎすぎるから、自分が上位種なんて傲慢に辿り着くんだ! 人間の可能性を否定するような度量の小さい男に、世界の変革など委ねられるか……!」
魂で叫ぶように咆哮した彼は、珍しく剣を顕現させて、男へ斬り掛かった。
男は彼の剣戟を受け止める。衝撃で散った無骨な火花は、この荘厳な部屋には似つかわしくなかった。
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