ダメツナことツナは、何をやってもダメダメ、
故に今日も村の子供たちにいじめられる毎日。

けれど、そんな彼にも誇れることがひとつだけあった。


「ツナくん、あたし、隣村に行ってくるね」

「あ、名前ちゃん。うん、行ってらっしゃい、気をつけてね」

「うん!」


村一番の美少女、名前と幼馴染だということだった。

名前は生まれつき弱い喉の治療のために、
毎週隣村の病院に通いつめているのだった。



……さて、場面は変わり、隣村へ出かけた名前はというと。



「……、先生、なんか外の様子、変じゃないですか?」

「ん?…ホントだ、やけに騒がしいね」

担当医と玄関の外へ出てみると、なんとまあ、村の中心が火の海に。
この医者の自宅兼診療所は、村からやや東のほうに外れているためか、
火の回りが遅く、まだ煙のにおいが僅かにするだけだった。

なんで、さっきまで平和な村だったのに。


名前は、医者が止めるのも無視して、何が起こったのかと村の中心へ駆けていった。




そこには、たくさんの人の亡骸。
その屍の中心には、真っ黒なマントに身を包んだ、
ちょうど名前と同じ年くらいの風貌の少年が立っていた。


「………、あのっ、」

「ん?」


勇気を振り絞って声をかけると、口元を拭って少年は振り返る。


「これ、………ぜんぶ、あなたがやったんですか!?」

「ワォ、女だ」


名前の質問などまるで聞こえていないように、少年はキラリと目を光らせ、微笑んだ。
それはそれは、とても怪しい、危険な雰囲気を纏った笑みだった。


「君、かなり美味そうな匂いだね。おいでよ」

「…………、ひっ………」


よく見ると、少年の口元には赤い液体……血液が滴っており、
その姿に情けなくも腰を抜かしてしまった名前は、ぺたりと座り込んでしまった。

ゆっくりと、少年がこちらに歩を進めてくる。

自分も、彼の足元の人たちのように、喰らわれてしまうのだろうか。

恐怖に震える名前は、ぎゅっと目をつむった。








一方、ツナは不思議な杖を持った魔法使いのような姿の人物に、
自分は怪物づかいの末裔、怪物を倒す使命がある、と諭されていた。


「無理無理!絶対無理ー!」

そう言って逃げるツナを、杖に乗った魔法使いが追う。
あっという間に蹴り(?)倒されたツナは、地面に突っ伏しつつうめいていた。


「言ったでしょう、あなたには使命があるのだと!」

「使命…?」

「隣村が、吸血ヒバリンに襲われたのです」

「!!」

口では吸血、ヒバリン…?と繰り返すものの、
頭の中は先ほど隣村へ出かけていった幼馴染のことでいっぱい。

たしかにその怪物とやらは、恐ろしくて話を聞くだけで足が震えてしまう。

けれど、正義感あふれる優しい名前のことだから、
その吸血ヒバリンにも近づいて行ってしまうだろう。

いじめられていた自分を、いつも助けてくれる優しい子。
ダメダメな自分を、ツナくんは優しくて心の広いとっても強い子だよ、と
慰めてくれたり、(まぁ、彼女にとっては本音かもしれないが)
怪我をすればすぐに駆け寄ってきて治療してくれる、小さい頃からそばにいた女の子。


身体は震えているけれど、心のどこかで、
ツナは名前を助けに行かなくては、と決心していた。


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bkm
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